錦織圭が「迷い」を振り落としたベルディヒ戦での分岐点 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 そうして、冒頭に触れたターニングポイントが、セット終盤に訪れる。分岐点を制して迎えたマッチポイントでは、相手の強打をスライスで流し込むようにストレートに返し、繊細なウイナーを決めてみせる。その瞬間、彼は天を仰ぎ、握りしめた拳を3度、頭上で力強く振りかざした。

「欲を言えば、まだ数ポイント(ブレークポイントを)獲りたかったけれど、大事なブレークポイントをセーブできたし、3回ブレークできた。なかなかブレークできそうでできない試合が多かったので、自分のテニスを取り戻していくキッカケになると思う」

 この勝利を……あるいは、ここ数ヶ月の流れの転換期にもなりえるカギを、錦織はそう振り返った。

 第1セット終盤から第2セット序盤の勢いそのままに、会心のプレーで圧勝する錦織を見てみたかったようにも思う。だが、結果的に、競った苦しい試合を勝ち抜いたことは、「心に引っ掛かっていた」迷いを振り落とすためには、むしろ良かったのではとも感じる。

 この勝利で、リーグ戦の成績は1勝1敗に。迷いを振りきった先で戦う相手が敬愛するロジャー・フェデラー(スイス)とは、今大会の流れはなかなかに粋だ。

「今でもフェデラーと対戦するときは、初めて対戦したときのような感覚がある。ツアーのなかで一番好きな選手なので、その選手と対戦し、最近では勝つ気持ちも持てている。どれだけ彼に通用するのか、試せる点が楽しみ」

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