【テニス】苦しんだ7年間。土居美咲がツアー初優勝を掴むまで (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「この勝利がいま思うと、とても大きかった」。後に彼女は、そう振り返っている。

 初めて立ったツアー決勝の戦いは、「永遠の課題」を克服したことを、何より強く印象づけるものであった。

 まずは第1セットの第1ゲーム。自分が何者であるかを世界に見せつけるべく、土居は抜き身の真剣を振るうように、左腕を振り抜き、鋭利かつ美しい球筋で相手コートを3度切り裂く。いきなりの鮮やかなブレークで、主導権を力強く掴みとった。

 だが、第2セットは並走状態から最後の最後、タイブレークでの不運な一打により失う。すると、第3セットは最初のサービスゲームで、0-40とブレークされる危機に直面した。仮に落とせば、試合の趨勢(すうせい)は一気に相手に傾きかねない、この試合最大のターニングポイント……。

 その緊迫の場面で、彼女は攻めた。凛(りん)とした表情のまま、「1ポイントずつ集中する」ことを心がけ、これまで幾度も阻まれてきた呪縛を軽快なステップでかわし、鋭く振り抜く腕で振り払った。

 最大の危機を切り抜けた後のゲームでは、対戦相手のモナ・バルテル(ドイツ)がプレッシャーに屈するように、2度のダブルフォールトを犯す。このとき、心・技・体すべてにおいて、土居は相手を組み伏せていた。最終スコアは6-4、6-7、6-0。終わってみれば、試合を通じて相手にひとつのブレークも許さぬ快勝である。

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