【テニス】苦しんだ7年間。土居美咲がツアー初優勝を掴むまで (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「彼女は素晴らしいボールを打つね。なんていう名前?」

 海外の試合で、土居のプレーに魅入られた観客や記者から尋ねられることは、何年も前から珍しくなかった。

 リスクと隣り合わせの超攻撃的テニスに、鋭い光をたたえる大きな瞳――。そんな土居の姿は周囲に勝ち気な印象を与えるが、他人が抱く第一印象と彼女の本質には、大きな乖離(かいり)が存在する。

「すっごく、人見知りなんです......」

 それが彼女の、自己分析だ。言葉数がやや少ないのは、自分を表現するのが苦手なだけ。激しいプレーはラフな性格を連想させるが、彼女を知る関係者たちは一様に、「ものすごく真面目」な土居の性質を証言する。地道なトレーニングも、手を抜かない。栄養士に「食べた物を報告するように」と言われれば、日々の食事を写真に撮って送った。

 そのようなテニスへの真摯な姿勢は、13~14歳のころにすでに見られていたようだ。海外ジュニア遠征に同行したコーチは、「敗者復活戦をもっとも頑張る子」として、土居の姿を記憶している。ともすると、無愛想や生意気と勘違いされがちな少女は、繊細な内面を覆い隠すかのように攻撃的スタイルを確立し、自分の弱さや課題と向き合いながら、世界最高峰のステージに立てるまでに至った。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る