ベテラン勢の支配が続く男子テニス。「世代交代の機」はいつだ? (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 なぜ、ベテラン勢の支配が続くのか……。この難問を解くための議論はここ数年で何度も交わされ、選手たちも会見などで幾度もそれらの問いに答えてきた。概要をまとめるなら、トレーニングや食事療法の向上によりフィジカル面の寿命が延び、そうなると技術と経験を強靭な肉体に詰め込んだ選手が有利になる……というのが、もっとも主流を占める解答だ。ラケットなどのテクノロジーの向上によって、その時々のニーズに応じた用具を手に入れられるというのも、多く聞かれる声。たしかにフェデラーは、ラケットを変えて再浮上した好例と言える。

 そしてもうひとつ、インターネットの普及や世界そのもののグローバル化により、旅のストレスや負担が減ったことも、選手寿命が延びた理由として忘れてはならないファクターだ。今や世界のどこにいても、母国の家族や友人とつながっていることができる。訪れた先々で祖国の人々に出会ったり、慣れ親しんだ味を堪能することも容易になった。

 かつて伊達公子は26歳でツアー生活の限界に突き当たったが、そんな彼女自身が今や旅を楽しんでいる。元世界1位のピート・サンプラスも、ツアー生活に疲弊したのが引退を決意した大きな原因だと言っていた。それらコート外の障壁が減った今、上位選手は確実に長く充実したキャリアを謳歌している。

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