全米OP開幕。錦織圭が「去年負けて良かったのかも」と語った真意 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 たしかに全米オープン決勝で敗れた直後の彼は、第1シードとして挑んだマレーシア・オープンで「勝って当然」のプレッシャーに打ち勝ち、頂点へと到達した。その翌週には、日本中の注視を集めた楽天ジャパンオープンで、「壁を打ち破り」2週連続優勝を成し遂げている。さらに11月には、年間上位8選手のみが参戦できるロンドン開催のATPツアーファイナルで、ベスト4に勝ち進んだ。

「どうなっていたかはわからないけれど、負けて良かったのかもと思うところもあります」

 今年の全米オープンを控えた会見で、錦織は飾ることなく本音を口にした。

 錦織圭とは、来た道を振り返ることのないアスリートだ。だが彼は、何もかもを背後に置き去りにするわけではない。忘れてもよい過去と、決して忘れてはならない想いを峻別し、後者は心の大切な場所にそっとしまっておく。

 だからこそ彼は、1年前に抱いた誓い......そして表彰セレモニーで口にした言葉を、今でもはっきりと覚えている。

「チームのみんな、ごめんなさい。今日はトロフィーを手にできなかったけれど、次は必ずつかんでみせる」

 昨年、足裏の「のう胞摘出手術」を受けたばかりで自信を抱けずにいた錦織を、心身両面でフォローし、時に厳しい言葉を掛け、背を叩いてくれたチームの願いを彼は感じ、感謝の気持ちをトロフィーとして示すつもりであった。それにもかかわらず、良いパフォーマンスができなかったことが何より悔しく、「チームのみんなにも悪いと思った」のだと言う。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る