全米オープン直前「ジョコビッチ包囲網」で勢力図に変化あり (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 マリーは2013年の9月に手術を受け、2014年の1月まで戦線を離脱。復帰してからは安定した成績を残しながらも、本来の彼らしいフットワークやリターンの切れを欠いていた。特に昨年末にロンドンで行なわれたATPツアーファイナルでは、これまで負けのなかった錦織に初の敗戦を喫し、フェデラーには0-6、1-6と1時間未満で完敗。地元メディアやファンたちから厳しく糾弾され、「女(元女子世界1位のアメリ・モレスモ)をコーチなんかにするからだ」と心ない言葉も浴びせられた。

 それでも彼は、「以前の状態に戻るには時間が必要なだけ」と言い続け、今年1月の全豪オープンでは決勝進出で自らの言葉を証明。今年もジョコビッチには4連敗中であったが、いずれも接戦に持ち込んでいた。

 今季のマリーは、従来よりもさらに速いタイミングでボールを捕らえ、特にダウンザライン(サイドラインに沿って打ち返すストレートの打球)に叩き込むバックハンドのストロークが、躍進への大きな武器となっている。それらの武器をたずさえ、今年5度目の対戦(モントリオール・マスターズ決勝)にして、ついにライバルに3時間の死闘の末、競り勝った。

 そして、このマリー以上に鮮烈なインパクトを残したのが、体力温存のためにモントリオールを欠場し、万全を期してシンシナティに挑んだフェデラーだ。あまりに万全を期しすぎたか、久々の試合だったフェデラーは、「試合の当日も奥さんや子どもたち(2組の双子で計4人)の面倒を見てバタバタしていたら、時計を見たとき、『あっ、もう数時間後に試合じゃないか!』と驚いた」ほどだという。それでも、「幸運なことに、僕は10分で気持ちを切り替えられるタイプなんだ。すぐにウォーミングアップし、集中して試合に入っていけた」という。

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