錦織圭が芝コートのウインブルドンでケガをした理由を考える

  • 神仁司●文・写真 text & photo by Ko Hitoshi

 これまで何度もケガに悩まされ、筋膜炎になった経験もあるクルム伊達公子は、錦織の決断を次のように評価した。

「(筋膜炎は)爆弾を抱えた状態。彼の今の状況を考えると、2回戦を勝って満足するわけはないですし、問題は準決勝や決勝を見据えて戦えるだけの状態かどうか、です。私は勇気ある決断だと思う」

 クルム伊達は、もしここでケガを悪化させて肉離れにでもなってしまったら、1、2週間では完治せず、錦織は夏のハードコートシーズンを「棒に振ってしまうリスクもあったのでは」とも指摘する。

 今回の錦織のケガは、グラス(天然芝)コートの特殊性も関連していると考えられる。

 実は、1月から11月中旬まで続くワールドツアーの中で、グラスシーズンはウインブルドンを含めて5週間しかない特殊なシーズン。また、錦織がプレーするグラス大会は、年にわずか2大会だけだ。そして、球足の遅いレッドクレー(赤土)から球足の速いグラスへのサーフェスの変化に合わせることが、もっとも難しいと言われている。

 たとえば、強力なトップスピン(順回転)をかけるフォアハンドが武器のラファエル・ナダル(スペイン、10位)は、グラスでプレーする時にはインパクトの瞬間にフラット面をつくってボールを押すようにして打つ。なぜなら、クレーと同じようにラケットヘッドを効かせ過ぎると、フレームショットを連発してしまうことになるからだ。

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