ケガの不安を吹き飛ばした錦織圭のパーソナリティ (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 その錦織が……である。果たして、痛めたふくらはぎに負担を掛けまいとしたケガの巧妙か、この日は芝の上を滑る感覚を制御でき、「そこが嬉しかった」のだと表情をほころばせた。

 もちろん、「直すところは、しっかり直さないと」と、兜(かぶと)の緒を締めもする。

「集中力をしっかり保つのが自分の課題で、直していかないといけないところ」
「もうちょっと前に出たりして、プレッシャーを掛ければよかった」

 そして、プレー面で最も悔いているというのが、第2セットのタイブレークでの、ひとつの選択ミスである。2-2の局面で、錦織は相手のオープンコートにフォアを叩き込んで前に出たが、その詰め方が甘く、ボレッリの返球をボレーで決めることができなかった。

「相手の動きを見てしまって……。あのポイントだけは悔やまれます」

 仮にこのタイブレークを取れていれば、「もう少しプレーに余裕が出てきた」ところ。それだけに結果的には、単なる1ポイント以上の意味を持ったプレーである。

 ふくらはぎのケガに話題が及ぶと、多少は言葉を濁したが、その返答にも彼らしい素直さとユーモアが透けてみえた。

「どのような動きをしたときに、ケガの影響を感じたか?」

 そう聞かれると、いたずらを見つけられた子どものような笑みを浮かべつつ、「たぶん、あっても言わないと思います」と即答し、記者たちの笑いを誘った。

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