ウインブルドンの芝に変化?錦織圭との相性はいかに (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 その一方で、芝の瑞々しさに足もとのグリップを奪われ、フットワークの難しさを常々感じさせられてもいる。「僕の最大の持ち味である、細かく切り返すフットワークが生かせない」。2013年ごろには、そのような困惑も漏らしている。また、高速サーブが効果的でラリーが長続きしないことも、駆け引きの妙を堪能したい錦織を時おり悩ませた。時速200キロを超えるビッグサーバーとの対戦が続いた昨年は、「集中力を維持するのが最大の課題」とコメントを残している。なお、錦織の芝のコートでのキャリア通算勝率は56.1パーセント。これは、ハードの67.2パーセント、クレーの69.7パーセントよりも低い数字である。

 錦織がそれらの所感を抱き、かつてフェデラーが席巻したウインブルドンのコートの特性とは、端的にまとめてしまうと以下のようなものになるだろう。バウンドが低く、球足が速い。ボールはバウンド後、勢いをそがれることなく、芝の上を滑るように跳ねる。ゆえにウイナーが決まりやすく、ラリーは短く終わることが多い……。これらの理由から、サーブが速い選手、さらにはサーブからネットに素早く詰めてボレーを決める「サーブ&ボレー」のスタイルが効果的とされる。

 また、「スライス」が効果的なのも、芝の特性だ。ボールの下を切るように打って逆回転を掛けるスライスショットは、バウンド後に軌道を変えて低く跳ねる。芝ではその特性に拍車が掛かり、一層処理の困難な魔球と化す。バックハンドを片手で打つ選手に有利とされるのも、このような理由からだ。

 1990年代から2000年代初頭にかけて活躍したピート・サンプラス(アメリカ)やフェデラーといったウインブルドンを7度も制した彼らは、いずれも上記の条件を揃えている。

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