噛み合わない歯車。4年前を思い出させた錦織圭の全仏 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 そのツォンガが、立ち上がりはいつもとプレーの様子が違った。強打の早いリズムで攻めてくると思われた相手が、バックのスライスを巧みに使いながら、錦織のリズムを崩しに掛かっているように見えたのである。この日は、スタジアムになびく国旗が引きちぎられそうなほどに風が強い。時おり、一陣の風が赤い砂嵐を巻き起こし、選手の視界をさえぎった。

 その強風の中、ツォンガは、「苦手だ」とメディアから常に指摘されてきたバックでは無理に攻めず、丁寧につないできた。あるいは、絶対に決まったと思われた錦織の強打を、フェンスに肩が付きそうなところまで下がって、ダイナミックな動きで拾いまくる。そしてバックサイドに打たれても、錦織のショットが浅くなれば、回り込んでフォアで叩いた。

 「風の中、早く決めなくてはと焦ってしまった」錦織は、徐々に自らミスを重ねていった。一方、サーブが好調なツォンガは、自分が主導権を掌握したと見るや、サービスゲームでは自慢のフォアを存分にふるい、今度は早い段階で勝負を仕掛けてきた。なんとか流れを変えようと、錦織はドロップショットやネットプレーを試みるも、一度狂った歯車は噛み合わず、どこかでミスが出てしまう。

「自分のやろうとしたことが、すべて悪いほうにいってしまった」

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