わずか1時間56分。錦織圭が「ひらめいた」クレー勝利の方程式 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 クレーコートでもコートの中に深く踏み込み、速い展開で果敢にウイナーを奪いにいくテニス――。

 これは、錦織が昨年から実践して成果を上げている、クレーコートでの革新的スタイルである。従来のクレーコートでの定石は、ベースラインの後方に下がり、重いスピンを掛けたボールを1球でも多く相手コートに打ち込むこと。もともと錦織も、クレーではそのようなプレーが求められると思っていた。恐らくはその思い込みが、ジュニア時代は「一番好きだった」コートが、プロになるにつれて「クレーのスペシャリストに勝つのは難しい」と、苦手意識を抱く場に変わった要因だろう。

 そのような定説に一石を投じ、意識革新を成すキッカケとなったのは、マイケル・チャン・コーチのアドバイスである。

「マイケルには、クレーコートでの良いアドバイスをたくさんもらった」という錦織は、自分本来のスタイルを少しだけクレー仕様にアジャストし、「速い展開で攻めるプレーこそが有効だ」という新説を赤土の上に描き、そして証明していった。その結果が、昨年のクレー10勝2敗、そして今季もここまで10勝2敗という好成績につながっている。

「昨年から、クレーでの戦い方を変えている。クレーでひらめきを覚えた瞬間から、どんどんクレーでも打って、ウイナーを取れると感じている」

 変革の時を、錦織はそう振り返った。

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