全仏オープン新時代へ。絶対王者ナダルが錦織圭に屈する!

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「これ、言うべきではないんだろうけれど......」

 全仏オープンに先駆けて、先週のローマ・マスターズ中に行なわれたインタビューでのことである。イギリス人記者に、「ローラン・ギャロス(全仏オープン会場)の思い出は?」と問われた錦織圭は、やや決まりが悪そうに前置きすると、こう続けた。

「僕が12~13歳のころ、大会が行なわれていない時にローラン・ギャロスを訪れたんだ。そうしたら、警備員も誰もいなかった。そこで、こっそりセンターコートに入り、スタジアムを眺めながら、いつかここで優勝する日を夢見たんだ」

今季一度もない「錦織圭×ナダル」戦が全仏オープンで実現するか今季一度もない「錦織圭×ナダル」戦が全仏オープンで実現するか あれから、10年以上の月日が経った。今や錦織は、世界のテニスファンや関係者が今年の全仏オープンの優勝候補のひとりに数える存在である。

「今年の全仏で優勝できると思うか?」。ローマでは会見中に、そんなダイレクトな質問が地元メディアから幾度も飛んだ。

「分からないけれど、努力はする。そうなれば素晴らしい」。その度に世界5位の25歳は、同じ言葉を繰り返した。

「圭は現在、2番目に優れたクレーコートプレーヤーだと僕は信じている」。そう語気を強めたのは、元世界ランキング1位で、現在はテレビコメンテーターとして活躍するジム・クーリエだ。

 世界中のテニス関係者が、錦織にここまで熱い視線と期待を向ける理由は、今、土のコートで起きている地殻変動にもあるだろう。

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