昨季クレー勝率80%超え。データで見る錦織圭の成長度 (5ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 最後に、クレーコートでの戦績を見てみよう。錦織のクレーコートでのキャリア勝率は66.0%。全コートを含むキャリア勝率が65.6%なので、ほぼ同じ成績である。ただ、昨年に限って言えば、クレーで10勝2敗、83.3%という驚異の勝率を叩き出した。これは、マイケル・チャンとともに取り組んできた、ボールの跳ね際を叩いて速いリズムで攻める「相手の時間を奪うテニス」と、錦織が従来から持つドロップショットなどを織り交ぜた創造性と高い戦略性が、クレーの上で抜群の化学反応を見せたためだろう。

 なお昨年、錦織のクレー連勝を10で止めたのは、「キング・オブ・クレー」のナダルだ。過去7連敗中の、錦織が唯一勝ち星を奪えていないビッグ4プレイヤーである。しかし、この試合で錦織はナダルから第1セットを奪い、第2セットも4-2とリードして赤土の王者を崖っぷちまで追い詰めた。結果的には、試合中に悪化した股関節やふくらはぎの負傷のために途中棄権を余儀なくされたが、試合内容では錦織が完全に上回っていたことは、ナダル本人や相手コーチまでもが認めている。

 今年の初夏、果たして錦織は赤土の上で、時の流れとともに狭まるビッグ4との差をさらに詰められるだろうか? 歴史を塗り替えるその第一歩を、クレーに刻むことができるだろうか?

 南欧の空の紺碧(こんぺき)と、強い陽光を浴びて燃えるように浮かび上がるクレーコートのビビッドな赤は、センセーショナルなドラマが似合う舞台である――。

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