ターニングポイントを嗅ぎ分ける「勝負師・錦織圭」の資質 (2ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

「最初は、特に出だしが入りにくかった。相手も良いプレイをしていて、なかなかミスをしなかった」

 マイアミオープンの4回戦――。初の対戦となるゴファンとの一戦を、錦織はそう振り返った。ゴファンと錦織はわずかに1歳違いだが、不思議とジュニア時代も含めて対戦はなく、昨シーズンの終盤に一度、練習をしたきりだと言う。

「あの時の圭は、まさに絶好調だった。練習でも押されることが多かった」

 初対戦を前にして、ゴファンはそう半年前の出来事を思い返す。

 だが、そのゴファンも昨年の終盤は、キャリアで最も充実した日々を送っていた。シーズン前半はケガに苦しんだものの、ウインブルドン以降にコーチを変え、それが躍進の契機となる。

 「新コーチは、僕を幼少期から知っていた人。彼にはボールを早いタイミングでとらえ、攻撃的なテニスに変えるようアドバイスされた」

 ジュニア時代から才能を高く評価されていた24歳のベルギー人選手は、新コーチとの取り組みによって、ランキングを一気に20位まで上げてきた。奇しくもその足跡や、与えられたアドバイスの内容は、マイケル・チャン・コーチと錦織のそれに重なるものがある。実際にゴファンも、「僕と圭は似たプレイスタイル。どちらも小柄だが、スピーディで、いろんなショットを打てる」と語り、初対戦を心待ちにしていた。

 初めての対戦は、誰にとっても難しい。だが、よりやりづらいのは、挑戦される立場のほうだ。

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