錦織圭を支える「最強バックハンド」の今と昔 (4ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 第2セットは、立ち上がりからユーズニーが元世界8位の意地とプライドをむき出しにして、勢いに乗る世界5位に立ち向かう。特に最初のゲームでは、ポイント奪取のたびに咆哮をあげ、自らを鼓舞し続けた。しかし、その闘志ですら、錦織のバックハンドは粉砕する。第1ゲーム4本目となるブレークポイントで錦織がバックのリターンを叩き込むと、ユーズニーの返球は力なくネットを叩く。さらに続く第2ゲーム、錦織が4回のデュースの末に奪ったとき、試合は実質的に決まったも同然だった。

 だが、そのように試合の流れが決しても、まったく慢心がないのが、さらに先を見据える第4シードの真骨頂だ。

「風もあるので、リスクは犯しにくい状況だった。ラリーを長くし、確実に決められるチャンスを待った」

 ミスをせず、確実にポイントを決めていくことこそが、結果として試合時間の短縮となり、同時に自分の調子を上げることにもつながる。その事実が端的に示されたのが、ゲームカウント5−1と大きくリードして向かえた相手のサービスゲーム。錦織は相手の強打をしのぎ、自分の形になるまでつなぎのショットも混ぜつつ、最後はバックの強打で相手のミスを誘った。このポイントで両者が交わしたショットは、17本。これが、この日の最長ラリーである。

 さらには同じゲームの相手のアドバンテージでも、14本のラリーをつなぎ、最後は錦織がバックでポイントを奪取。結果、6回のデュースの末にゲームをブレークした錦織が6−2、6−1で、試合時間1時間8分のスピード勝利を掴み取った。

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