錦織圭を支える「最強バックハンド」の今と昔 (2ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 また、元世界1位でテレビコメンテーターやデビスカップの米国キャプテンを歴任しているジム・クーリエも、「これまで最強バックハンドの持ち主はジョコビッチで、2位がマリー、そしてナダルと錦織が3位タイだと思っていた。だが、錦織をもっと上にしなくてはいけない」と述べていた。

 錦織自身は「最も自信があるのはフォア」だと常々公言しているが、世界中の選手を畏怖(いふ)させるバックの武器を得たことは、実は"省エネテニス"にもつながっている。

 昨年の全米オープンのデータによると、錦織が1ポイント獲得に要した走行距離は52.1フィート(約15.9メートル)。これは、ベスト8に進出した選手の中で最も短い距離であった。この数字の背景にあるのは、錦織がそれだけラリー戦を支配していることと、ベースラインに近い位置で打つため左右の移動距離が少ないこと。そして、前述のドルゴポロフの分析を加えるなら、バックサイドのボールにも最短距離で走り込み、バックハンドからウイナー級の強打を打てていることが上げられるだろう。

 通常、多くの選手はフォアを得手とするため、バックサイドのボールも可能な限り回りこんでフォアで打とうとする。しかし、それでは走行距離が増え、またフォアサイドに大きなオープンスペースを作るため、返球された際のリスクも増す。その点、錦織はバックからも攻守一体となったプレイができるようになったため、全コートを効率よくカバーでき、それが走行距離の短縮につながっているのだろう。

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