錦織圭が10代から指摘されていた「苦手なタイプ」とは? (4ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「風下だったのもあり、相手のスライスが伸びてきたので、少し焦ってしまった。ストロークでも(相手の)フレームショット(※)など、運が悪かったのもあって……」

※フレームショット=ラケットのフレーム部分で打球すること。ボールは不規則な変化をすることが多い。

 ボールを打つ際に、「一度もしっくりくる時がなかった」と言うほどに苦しんだ打球感が、焦りの根底にあったようだ。

 もちろん、そうは言っても、錦織がただ手をこまねいていたわけではない。例えば第2セット、相手にブレークされて2-4の危機に面した第7ゲーム。ニューボールで迎えたこのゲームに入る直前、錦織はラケットを変えている。

『ニューボール』とは文字どおり、新しいボールのこと。テニスの試合では最初の7ゲーム終了後、その後は9ゲームごとにすべて新しいボールに交換する。同じボールを使い続けると、フェルト部分が摩耗したり、内部の圧力が低下してボールの質が低下するためである。

 そのボール同様、ラケットのストリング(ガット)も試合で何度もボールを打つうちに、打球感が変わってくる。そこでニューボールのタイミングでラケットも変えると、試合開始当初のような『誤差』の少ない状態になると言われている。

 そして、ラケットを変えて迎えた最初のリターンゲーム。錦織はロペスの高速サーブを叩いてリターンから攻め、ストローク戦を支配する。狙いどおりブレークバックに成功した錦織は、以降は自分のサービスゲームを確実にキープしていった。

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