錦織圭が10代から指摘されていた「苦手なタイプ」とは?

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「オーバーパワーしてくる相手(パワー型の選手)、左利き、そしてネットダッシュしてくる選手」

 錦織の苦手傾向にある選手の特性をそう述べたのは、少年時代の錦織を指導したアシスタントコーチである。もちろん、錦織は実力の向上とともに、それらの弱点を克服してきた。だがそれでも、これら3つの特性をそろえた選手が相手となれば、苦手意識が頭をもたげることもあるだろう。

 ロペスはまさに、その条件に当てはまる選手である。そして悪いことに、ボールとサーフェスのコンビネーションにより生まれるこの大会の「悪しき特性」を、ロペスはさほど受けはしない。ネットダッシュでボレーを多用し、ボールがバウンドするより先にポイントを決めることが多いタイプだからだ。また、片手で放つロペスのバックのスライスは、バウンド後に予測不能な場所へと跳ねて錦織を悩ませた。

 このような悪条件や苦手意識が重なって噴出したかのような局面が、第1セットの4-5で迎えた錦織のサービスゲームである。このゲームで錦織は、最初のポイントでサーブ&ボレーを試みるも失敗。その後はバックハンドショットでミスを重ね、最後もネットに出たところを相手のフォアで抜かれてしまう。

「それまではストロークでも支配していたし、チャンスはあった。あの、4-5の1ゲームだけ。あの1ゲームがすべてだった」

 試合後に錦織が真っ先に振り返った、ターニングポイントである。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る