ベスト8進出。錦織圭がつかんだ「優勝へのギアチェンジ」

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi photo by Ko Hitoshi

 3試合をとおして錦織の試合運びのうまさが光り、精神的に動じる場面はまったく見られなかった。だが、ショットのキレがいまひとつ。ランキング上位として、格下に勝たなければいけないというプレッシャーが錦織のプレーに少なからず影響を及ぼしていたようだ。

 迎えた全豪の第2週、「もっと思い切りのいいプレーが必要になってくる」と語った錦織は、4回戦でツアー屈指のストローカーであり強靭なスタミナを誇るフェレールと対戦。この試合で、錦織は相手のベースライン深くにスピードにのったグランドストロークを打ち込んで、終始試合を支配した。

「ストロークのフィーリングが良かった」という錦織の放ったウィナーは43本。フェレールの足の速さと高いコートカバーリング能力を踏まえると、この数字は驚異的といっていい。これで錦織は自分のリズムをつかみ、最高のプレーを披露して勝利した。

「圭にとって、これまでの僕との対戦で今日の試合がベストマッチになったんじゃないかな。彼は準決勝に行けるチャンスがあると思うよ」(フェレール)

「(フェレールは)リズムをつかみやすい相手。今までの対戦相手はパワープレーヤーで、ラリーの続かない展開が多かったが、今日のようにリズムをつくれる相手だと自分のプレーのレベルが上がる。ストロークが良くなって、攻撃力が上がった。その結果、彼の武器であるしつこさを封じるテニスができた。彼にすんなり勝てたのは初めてなので、自分でもびっくりしている。

 対戦相手がタフになってくる2週目に、3セットで勝てたのは大きいです。ここからは、プレッシャーを感じることなくやれると思う。これから自分自身の体力的な勝負にもなるし、駆け引きもあって大変になってきますけど頑張ります」(錦織)

 自分よりランキングが低い選手には負けられないというプレシャーから解放された錦織。ここからは、グランドスラム初制覇を目指す挑戦者として、本当の実力が試されていく。

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