神尾米が語る2014年「今季の伊達さんはすごく明るかった」 (4ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 今季の伊達さんは、グランドスラムのシングルスではドローに恵まれず、初戦敗退が続きました。しかし、すべてフルセットの大熱戦でした。伊達さんならどこのドローに入っても、例え相手が第1シードでも、「何かやってくれるのでは」とワクワクさせてくれます。実力的に相手が上だとしても、踏んばりながら何かしら見せてくれるのが、伊達さんです。

 相手が伊達さんのテニスにハマり、固まってしまう……。今季、そんなシーンを何度も見ました。若い選手からすれば、43歳でも第一線で活躍している伊達さんに対し、「何か特別なモノを持っているはずだ」と一歩構えて考えてしまうのではないでしょうか。そして実際、コートに立って対戦すると、相手のパワーを上手に使う伊達さんのライジングショットは、なおのこと不気味に感じるはずです。自分の調子は良いのに、打てば打つほど鋭いボールがポンポンと返ってきてポイントが取れない。「何かおかしい、早めに攻略しないといけない……」。そんな焦りが生まれてしまうのでしょう。

 そして伊達さんは、相手のそのような心理も頭に入れながら、試合に向かっていると思います。どこかで相手が硬くなる時間帯が出てくるはずと信じ、その時を待ちながら集中しているのだと思います。全米オープンのビーナス・ウィリアムズ(アメリカ)戦でも、試合途中でビーナスが本来の速い展開ではなく、ゆるいボールを多く打ち始めるようなシーンがありました。焦ったビーナスを見た、印象的な試合でしたね。

 一方、伊達さんのプレイの幅は、1990年代のころよりも広がっているように感じます。今のほうがスライスやドロップショットを使うし、ネットにも出て行きます。昔は、ムーンボール(ゆるい山なりのボール)が伊達さん対策として広く知られ、高く跳ねるボールに苦しめられていました。でも今では、ネットに出てボレーでカットしたり、ドライブボレーで決めるプレイを以前よりも実践しているように感じます。

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