神尾米が語る2014年「今季の伊達さんはすごく明るかった」

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 以前の奈良選手なら、ボールがバウンドしてから少し落ちてくるのを待って打つことが多かったと思います。ですが今は、前よりも高い打点でボールを打てています。ボールを捕えるタイミングが速くなったので、展開も速いし、特にストレートへのショットを効果的に使えているようになったと感じました。

 来年の奈良選手は、他の選手たちに警戒されることも多くなるでしょう。ですが、守りに入らなくても良いランキング(現在44位)だと思います。まだ上だけを見てやっていけるポジションですし、むしろそうあってほしいです。

 現在のランキングシステムは、1年前に勝って獲得したポイントを守らないと、ランキングが落ちてしまいます。そのため、昨年優勝した大会や、良い成績を残したグランドスラムが近づいてくると、プレッシャーが強くなってくるかもしれません。それらを乗り越え、奈良選手が今後も活躍していくためのカギは、「どれくらいプレイの引き出しを増やせるか」ではないでしょうか。例えば、今の展開力に加えて、ネットで仕留めるボレーであったり、相手をいなすショットだったり……、そのあたりを増やすと、さらに上が見えてくるのかなと思います。

 そのような面でいうと、クルム伊達公子さんの引き出しの多さは素晴らしいですよね。持ち味のライジングショットや展開力に加えて、スッと前へボレーに出たり、スライスなどいろんなショットを使い分けたり……。相手にプレイスタイルを研究されていても、「まだ手持ちのカードがあるわよ」というのを見せられるところが、伊達さんのすごいところだと思います。

 伊達さんは本当に、テニスに打ち込んでいる自分が好きで、誰かにやらされることなく自分の意志で、自分のためにやっているんだと思います。コート上で戦っている自分が好きだろうし、戦いに向けてトレーニングしている自分も好きなんだと思います。ですので、例え試合に負けても、潔(いさぎよ)いですよね。だからこそ、次の試合に気持ちを切りかえて行けるんだと思います。

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