価値あるベスト4。若き日のフェデラーと重なる錦織圭の快進撃 (3ページ目)

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi photo by Ko Hitoshi

 今回のツアーファイナルズには、24歳の錦織を含めて、23歳のラオニッチと26歳のマリン・チリッチ(9位)の3人が初出場を果たした。だが、大会5日目までに、初出場組で勝ち星を挙げているのは錦織だけで、他のふたりは、初出場の洗礼を受けている。

「初めての舞台で、ここまでいいテニスができているのは、自信になるし、嬉しいです。(ツアーファイナルズは)やっぱり誰にとっても、タフな大きな舞台で、初めてというのは大変だと思う。たまたま自分はいいテニスができていて、自信もついてきている。彼ら(ラオニッチとチリッチ)は、たぶんケガも少しあって、完璧な試合ができたとは思えない」(錦織)

 たとえば、現在の世界ナンバーワンで、この大会で3度優勝しているノバク・ジョコビッチは、07年に20歳でマスターズカップ(当時のツアー最終戦の呼称)に初出場を果たしたが、RR3敗で苦いデビューだった。当時のジョコビッチは、シーズン終盤に来てガス欠状態で、体力もメンタルもすっかり消耗してしまっていたのだ。

 一方、大会最多6度の優勝経験を持つフェデラーは、21歳で02年のマスターズカップにデビューすると、いきなりRRで3連勝。ベスト4に進出し、準決勝では当時の世界ナンバーワンのレイトン・ヒューイットにフルセットで敗れたものの、その後の飛躍を予感させる活躍を見せたのだった。フェデラーは、当時のことを次のように回想する。

「2002年の初出場のことは、よく覚えているよ。(開催地の)上海で、僕はとてもいいプレーができた。自分自身をまったく疑わなかった。ただプレーに専念した。失うものはなかった。シーズンを力強く終えようと臨んだだけだったよ」

 今回のロンドンでの、錦織と同世代の初出場選手の苦戦や、歴代チャンピオン達のマスターズカップデビューとの比較からもわかるように、錦織のツアーファイナルズ初出場でのベスト4進出は、非常に価値ある結果といえる。

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