2014.05.23

ナダル&ジョコビッチが語る「錦織圭、全仏大躍進の可能性」

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

 錦織に寄せられる期待の波とは、新世代が上位陣を追いあげ、世代交代を成そうとする、その勢いを反映したものでもあるだろう。

「同じ選手ばかりが優勝している」と言われて久しい男子テニスは、たしかに2005年以降のグランドスラムを見てみると、2005年全豪のマラト・サフィン(ロシア)、2009年全米のファン・マルティン・デルポトロ(アルゼンチン)、そして今年1月の全豪を制したスタニスラス・ワウリンカ(スイス)以外はすべて、いわゆる「ビッグ4」が独占してきた。フェデラーとナダルの2強時代から、そこにノバク・ジョコビッチ(セルビア)とアンディ・マリー(イギリス)を加えた4強への支配層拡大が、この10年で見られたほぼ唯一の、上位勢の地殻変動である。グランドスラムに次ぐグレードの「マスターズ大会」のベスト4も、ほぼビッグ4の指定枠だった。

 だが今季、その盤石の地盤に最初に穴を開けたのが、錦織だ。3月のマイアミ・マスターズでフェデラーを破ってベスト4に進出すると、2週間前のマドリッド大会では、決勝でナダルを6-2、4-2まで追い詰めた。さらには錦織に感化されたかのように、先週のローマ大会では、23歳のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)とグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)が、揃ってベスト4入りを果たしている。

 それらクレーで快進撃を見せる新世代の3選手とは対照的に、全仏8回の優勝を誇るナダルの前哨戦での成績に、今季は異変が現れている。これまで8度制してきたモンテカルロ大会とバルセロナ大会で、いずれも準々決勝敗退。マドリッド大会は錦織の棄権により優勝したものの、先週のローマ大会でもタイトルに手が届かなかった。「キング・オブ・クレー」が見せた思わぬもろさが世代交代への予感を喚起し、錦織を中心とする新世代のヒーロー待望論へとつながっている。

 若手の台頭、あるいは下剋上を求める世間の機運は、ナダルやジョコビッチらトップ選手も、痛いほどに感じているようだ。

「錦織は、世界1位になれると思うか?」

 そう問うスペイン記者に対し、ナダルは、「僕は性急に誰かを持ち上げたり、逆にすぐに地面へ突き落すような評価は好きではない」と前置きした上で、こう続けた。

「ケイがトップ選手のひとりになることは間違いないだろう。このまま今のレベルを維持できれば、1位候補であることは間違いない」

 また、「彼は信じがたい選手だ。今年のロンドンのマスターズカップ(年間上位8選手のみが出場できる大会)に出場するのは、間違いないだろう」とのお墨付きも与えている。

 同時に「世代交代」に関しては、それは時代の必然だという視座も示した。

「若い選手が台頭するのは、普通のこと。むしろ、過去5~6年間のように、同じ選手が勝ち続けることが普通じゃなかったんだ。ディミトロフ、ラオニッチ、そして錦織は若く、とても優れた選手たち。彼らがこれから先の5~6年間、大きなタイトルを勝っていくだろう。僕らは、この位置に永遠にいられるわけではないからね」