【テニス】期待の17歳、日比万葉が語る「東京五輪への想い」 (2ページ目)

  • 内田暁●文・写真 text & photo by Uchida Akatsuki

「今の女子テニスには、私のようなスタイルの選手はいない。男子のプレイを研究した方が、自分のためになる」

 男子主体で見る理由を、彼女はそう説明した。プレイスタイルが画一化されがちな今の女子テニスにあって、70~80年代を彷彿させる日比のクラシカルなスタイルは、目の肥えたアメリカのファンを早くもうならせている。出る大会、行く会場で、「君のようなテニスが好きなんだよ」と声を掛けられることも珍しくない。

 15歳のころからプロ大会に出始めた日比は、これまですでに3大会で優勝しているが、ステータスはアマチュアのままだった。決断をぎりぎりまで引っ張ったのは、大学進学の選択肢を残すため。実際に複数の名門大学から特待生のオファーを受け、進学に心が動いたこともあった。だが、最終的には昨年末、プロ転向を決意する。「いろんなことを考えた」上での、人生の一大決心。昨年8月に全米オープン予選に出場し、その際にWTA(女子テニス協会)の講習を受けてツアーの仕組みを学んだことも、プロの世界に踏み出す覚悟を後押しした。

 もちろん、転向を決めた背景には、プロでも通用するという根拠や手がかりを、これまでの戦いで得てきた自負があるからだ。日比が昨年破った選手の中には、今年1月の全豪オープンで3回戦まで勝ち進んだ60位のローレン・デイビス(アメリカ)や、68位のアヤラ・トムリャノビッチ(クロアチア)らがいる。それら、世界で戦う選手たちを破った事実は、「自信になった」と日比は言った。出場試合数が少ないためランキングこそ200位台だが、残してきた実績を見れば、数字は彼女の実力を正しく反映していない。

 プロ1年目となる今年の4月、日比は18歳を迎える。現在のWTAのルールでは、17歳までは年間の出場大会数が限られるが、18歳の誕生日以降は自由にスケジュールを組むことが可能だ。そうなれば遠征も増えていくし、13歳の時以来となる日本でのプレイも当然、視野に入ってくる。現時点で出場の可能性が最も高いのは、4月末に岐阜で開催されるカンガルーカップ。また、10月に生まれ故郷の大阪で開催されるジャパン女子オープンも、ぜひ出たい大会のひとつだろう。そうしてプロとして初めて立つ日本のコートは、例えそれがどの街だろうとも、東京の有明コロシアムで行なわれるオリンピックへと続いていく。

「やっぱり、オリンピックというのは大きいです。今はトップの選手たちもみんな、オリンピックに出たがっていますし」

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