新コーチ、チャンとの化学反応。錦織圭が全豪で見せた成長の証 (3ページ目)

  • 神 仁司●取材・文・撮影 text&photo by Ko Hitoshi

 ただ、チャンのツアーコーチとしての実績は、中国の女子選手を一時指導したことがあるぐらい。当初錦織は、指導者としてのチャンの力量に不安を抱く部分もあったというが、それは一緒に練習をしてすぐに払拭された。

「最初は少し不安がありましたね。どういうコーチングをするのかわかりませんでしたし。でも、一緒にやっていくうちに、彼のアドバイスや、一つ一つの言葉が本当にプロフェッショナルというか、尊敬できることばかりなので、不安はすぐになくなりました」

 昨年末のオフの練習は厳しく、かつてないほどの練習量だったという。錦織最大の武器であるフォアハンドストロークにもチャンから指摘があった。

「しっかり足をセットしてから、いちばん力の入るところで打つことをもっとも言われています。反復練習が大事だというのは感じますね。たしかに(フォアは)得意なショットですけど、それだけに100%決めないといけない。フォアのチャンスボールを反復練習して、自信をつけることは意味があると思います」

 同時に錦織は、チャンの要求に「対応しきれていない自分をもどかしく思う」こともあるが、「それをクリアできれば、またひとつレベルアップできる」という自分自身への期待もある。

「(チャンは)すごくまじめで、細かい。まだ彼の言うとおりにできない自分へのイライラがときどきある。彼の要求に応えることができるようになれば、もっと強くなっていけると思います」

 今回の全豪で錦織は、4回戦でナダルと当たるタフドローだったが、もしドローが異なっていたら、ベスト8以上に入れるクオリティーの高いテニスを見せていた。チャンと取り組んできた練習の成果も見て取れた。

 錦織が目指すのはグランドスラムでの優勝と世界ナンバーワンだ。そして今回、王者ナダルと戦って体感した世界の頂点との距離を、次のように語った。

「(目標までの距離は)正直よくわからないですね。近いような、まだまだ遠いような……。(ナダルと)ラリーをして、十分戦えるなというのは感じますけど、現実には、まだ彼から1セットも取れていないので……」

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