新コーチ、チャンとの化学反応。錦織圭が全豪で見せた成長の証 (2ページ目)

  • 神 仁司●取材・文・撮影 text&photo by Ko Hitoshi

 こうした好調の要因として、昨年12月から錦織のコーチについたマイケル・チャンの存在が挙げられる。

「マイケル自身が、現役時代になかなかトップ10に入れなかった境遇と、今の自分の状況が似ているので、アドバイスを聞いてみようと思いコーチを依頼しました」

 昨年、最高でランキング11位になりながら、トップ10入りを果たせなかった錦織は、かつての名選手による説得力のあるアドバイスを求めたのだ。

昨年末から錦織のコーチに加わったマイケル・チャン(写真左)昨年末から錦織のコーチに加わったマイケル・チャン(写真左) 中国系アメリカ人のチャンは、1989年ローランギャロス(全仏)で当時17歳3ヵ月ながら初優勝し、世界を驚かせた。身長175cmと、トップ選手の中では小柄ながら、世界屈指の俊敏なフットワークと驚異的なスタミナでコートを駆け回り、世界ランキング2位まで登りつめた。

 それでも、チャンは全仏優勝後、90、91年にトップ10に定着できない時期があった。そんな葛藤をした経験のあるチャンに、現在トップ10入りの壁にぶつかっている錦織は教えを請い、自らの成長につなげようとしている。

 依頼を受けた41歳のチャンは、錦織のために現場復帰することを快諾した。

「自分にとっても楽しみな巡り合わせです。現在のツアーでは、まだアジアの男子選手が、たくさん活躍しているとは言えません。圭が次のレベルに到達するために、何か助けになれるよい機会だと考えています」

 1994年に初めて日本女子選手としてトップ10入りをしたクルム伊達公子は、錦織がチャンを選択したことに、自らの経験も踏まえて共感する。

「(体の)大きくない選手が、どうトップ10に入っていくかというところで、マイケルの指導を受ける必要性を感じたのではないでしょうか。トップ10を経験し、グランドスラムのタイトルを取ったことがあるチャンの言葉には当然重みがあると思います。私も実際に経験していますが、世界のトップ10に入ることは、生半可な気持ちでできるものではない。マイケルはストイックだし、話を聞いていてもすごく細かいアドバイスができるし、(錦織に)いい影響が出てくるのでは」

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