「ベストに近い」。クルム伊達公子が振り返る今季のグランドスラム (2ページ目)

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • photo by Ko Hitoshi

 これで、クルム伊達は2013年のグランドスラムの戦いをすべて終えた。4大テニスメジャーでの戦いに限って振り返れば、全豪とウインブルドンでシングルス3回戦進出という結果を残した。今シーズンは、現役再チャレンジ後のベストシーズンといっても過言ではないだろう。

「いちばん良いシーズンと言いきれるかどうかわかりませんけど、ベストに近い。グランドスラムは特別なだけに、そこでいいパフォーマンスが2回できたことは、もちろん悪い結果ではないです。再チャレンジ後に、3回戦(進出)ができるとは思ってもいなかったので、いいシーズンでした」

 少し気が早いが、来シーズンのグランドスラムでは、シングルスでのベスト16への期待も膨らむ。だが、クルム伊達は、決して浮き足立つようなことはなく、現実を直視している。

「(グランドスラムは)簡単じゃないです。ドローの運があったり、体力的なことがあったり、今回のようなケガのことがあったりするので、いろんなことがかみ合わないと難しい。まして、明日のことはわからないので......。明日またどこかケガしているかもしれないし、(秋の)アジアシーズンで大ケガをするかもしれないし、あまり先のことは見えていないです」

 ここ3週間、炎症止めを飲みながらプレイしていたクルム伊達。今はまず、アキレス腱痛を完治させることを考え、ニューヨークで検査をしてから帰国する予定だ。

「ニューヨークでシングルとダブルス、ミックスダブルスと3種目プレイしましたが、(アキレス腱は)最悪の状態からは抜け出した。まだいい方向に向いているとは言えないけど、悪い方向には向いていない」

「アジアシーズンで、また良いテニスをすることしか考えていない」と語るクルム伊達は、この先、ソウル、東京、北京、大阪と、4週連続で転戦していく。

 明日のことはわからない――。

クルム伊達の挑戦は、いつだってそんなリスクを背負っている。それでも彼女が戦いをやめないのは、テニスをする楽しさを見出せるからこそ。彼女自身の限界は、まだまだ先にあると感じているのだ。

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