【テニス】5度目の対戦。錦織圭がナダルを本気にさせたワケ (4ページ目)

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • 神仁司●写真 photo by Ko Hitoshi

 5度目の対戦にもかかわらず完敗した……、のではない。錦織の地位と実力が上がったからこそ、ナダルは錦織に牙を向き、がっぷり四つに組んでの力比べを望んだ。その結果、錦織が抱いた「クレーでのナダルはスキがない。どれだけ攻めても深いボールが返ってくるので、精神面でもっとタフでなくてはいけない」という課題は、「堂々とやろうと思った」からこそ得られた財産だ。

「彼とは年齢も近いので(錦織=23歳、ナダル=27歳)、自分がテニスをやっている間は、いつまでもコートにいる選手だと思う。早く突破口を見つけて、勝てるようにしたい」

 初のクレーでの対戦を終え、錦織はナダルについてそう語った。

 錦織はもはやナダルを、世界との距離を測る一方向だけの物差しとは見ていない。乗り越えるべき壁として、その高さを、そして強度を、あらゆる角度から測っているのだ。いつか訪れるであろう、錦織がナダルを破る日――。その冒険の始まりが、この日の赤土だと信じたい。

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