2013.03.18

【テニス】クルム伊達が語るテニス論「寝るのも食べるのも仕事」

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • 佐藤ひろし●写真 photo by Sato Hiroshi

――シングルスを意識したとき、ダブルスではどのような点を心がけてプレイしているのでしょう?

伊達 ダブルスでは基本的に、(自分たちの)コートの半面を使いながら、いかに(相手コートの)全面を使ってスペースを作っていくかが重要になります。また、ダブルスだとプレイのテンポが早くなりますが、私のテニスは、その方がフィーリングも上がりやすい。そういう意味では、ダブルスの早いテンポでやっていることが、自然とシングルスに生きてくるのかと思います。あと、ダブルスでは自分のサービスゲームにプレシャーが掛かってくるので、サービスゲームの向上にも生きると思います。

 今シーズン、全豪オープンで単複3回戦進出という驚愕の好スタートを切り、BNPパリバオープン・シングルスで初戦突破。そしてダブルスでもベスト4の好成績を残した。クルム伊達の『復活』の背景には、昨年のウインブルドン以降に東京・恵比寿のジムで取り組み始めた、新たなトレーニングがある。『ファンクショナルトレーニング』と呼ばれるそのトレーニング法は、身体を効果的に使うことを目的としたものだ。

 昨シーズン、勝ち星に見放された苦しい時期、己の内の猜疑心を拒み、限界を囁(ささや)く周囲の声を拒絶しながら自分の身体と向き合うその過程とは、いかなる戦いだったのだろう。

――ウインブルドン以降に通った恵比寿のジムは、誰かに勧められたのですか?

伊達 WTA(女子テニス協会)と、日本テニス協会のナショナルチームに、良い場所がないか相談していました。そうしたら、それぞれから紹介された場所が一緒だったんです。私はまったく知らないところで、知人がいたわけでもなかったのですが、それで行くことにしました。

――昨年の勝てない時期に、自分を支えた思いとは何だったのでしょう?

伊達 とにかく、ケガをした状態で自分のテニスができないまま、辞めるとかギブアップすることは考えられませんでした。100%だと思える状態で手も足も出なかったら、やっぱり限界なのかな……と思ったかもしれませんが、ケガがある中で納得できないなら、(ケガを治して)可能性を見出したいという気持ちがありました。そこが一番大きかったと思います。

――コーチの中野陽夫さんは、ファンクショナルトレーニングに取り組んだ結果、身体の『捻(ひね)り』の動きが向上したと言っていました。そのあたりは、ご自身でも感じますか?

伊達 彼はそう言うんですが、私的には、まだそこまでは……。捻りの中で『タメ』を作れるようになれると、今まで起きた故障も少なくなるということで、ずっとそれを目的にやって来ています。ただ私自身としては、『タメ』が作れるようになったという意識はあるんですが、捻りの動きはまだまだです。

 コーチが向上したと評する点を、クルム伊達自身は「まだまだそこまで行っていない」と感じていると言う。それがアスリートと周囲の感覚の差異だろうし、クルム伊達が自分に要求するレベルの高さを示すものでもある。

 前人未到の荒野を切り開く42歳のチャレンジャーは、今、何を見つめ、どこに向かって邁進しているのだろう。