【テニス】フェド杯でロシアに敗退。絶不調・クルム伊達の誤算とは? (2ページ目)

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi  photo by Ko Hitoshi

「アウェーの洗礼」とも言えるようなこのサーフェスが原因で、クルム伊達のプレイは誤算の連続となった。さらに、コートが硬くないため、アキレス腱にいつもより負担がかかってスタミナを奪われ、イライラは募るばかりだった。

「(今シーズンは調子がよく)自分自身でも期待しているところはありましたけど、このサーフェスで練習して、完全に崩されてしまい、期待できるものはなくなってしまった」(クルム伊達)

 過去4度のフェドカップ優勝を誇るロシアチームは、マリア・シャラポワ(世界ランキング2位)が欠場したが、それ以外はマリア・キリレンコ(同13位)を筆頭にほぼベストメンバー。初日の第1試合で、過去2戦2勝だったキリレンコに6-7(3)、4-6で敗れたクルム伊達の表情は冴えないままだった。

「勝つために何ができるのか、考えながらコートに立って戦っていた。アウェーで難しい部分はありましたけど、波に乗り切れなかったのはすごく残念。チームにいい流れをつくれなかったのも残念」

 そして、さらなる誤算が、クルム伊達を襲った。

 1月から不安を抱え、全豪シングルス3回戦で症状が出た右アキレス腱痛が、キリレンコ戦後に再発。「今朝(大会2日目)になっても(痛みが)ひかなかった。(試合では)薬を2回飲んで、痛みはなかった」というが、状態は最悪だった。

 2日目の第3試合で、森田がシングルスで2勝目を挙げ、日本が王手をかけた大切な場面で(シングルス4試合とダブルス1試合のうち、先に3勝を挙げた国が準決勝へ進む)、クルム伊達は、エカテリーナ・マカロワ(20位)との第4試合を戦うことになった。だが、試合前には「やるべきなのか、やるべきじゃないのか」迷ったという。自分がプレイを断念すれば、替わりに経験の浅い土居美咲(84位)が出場することになる。自分のケガと若手への負担を天秤にかけたクルム伊達は、最終的には自分が出場することを選んだ。

「(村上武資フェドカップ日本代表)監督からはできるならやってほしいと言われた。確実にパフォーマンスが落ちる私を使うか、元気な土居ちゃんを使うか、決めてください、とも言いました」(クルム伊達)

 村上監督と話し合ったクルム伊達だったが、森田の好プレイに触発され「あゆみちゃんのプレイを見て、やらなきゃいけない」という気持ちが大きくなったという。結果、第4試合に出場する意志を示し、村上監督もゴーサインを出した。

「1996年フェドカップ・ドイツ戦で、当時の女王シュテフィ・グラフに勝った時も、伊達は足を引きずりながらプレイした。もちろんその時と年齢は違いますけど、彼女の力を信じて決めた。非常に迷いましたが、きっとやってくれるだろうと」

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