【テニス】錦織圭、エースの自覚。デ杯ワールドグループ残留を誓う

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 また、錦織の内面的変化ということで言うと、彼を13歳のころから良く知るテニス関係者のひとりが最近の錦織について、「周りを見る余裕が出てきて、人間としてすごく成熟した」と語っている。成績が上がって尊大になるのではなく、むしろ周囲の人々に気を遣うゆとりを見せているというのだ。わずか4年の間に自身のケガや2度のオリンピック、そして5度のデ杯出場などの修羅場を経験した錦織は、国を背負う重圧や緊張感すら受け入れ、自身の力に変える真のエースに成長した。

 そして、9月14日から有明コロシアムで3日間行なわれる、今回のデビスカップである。『ワールドグループ・プレイオフ』と位置付けられたこの対戦に勝てば、日本は世界の16カ国により構成される『ワールドグループ』に残留することができる。つまりは、世界の頂点への道も開かれることになるのだ。チーム戦としての勝敗は、シングルス4試合とダブルス1試合の計5試合のうち、先に3勝した方の勝ちとなる。

 対戦相手は、イスラエル。この世界ランキング11位の強豪国を、日本は錦織を筆頭に添田豪、伊藤竜馬、そして杉田祐一という、4人のうち3人がトップ100という最強布陣で迎え撃つ。

 対するイスラエルの最大の強みは、ダブルスである。長くチームを組んできた強豪ペアを擁するため、日本としては、ダブルスでの勝利は計算しづらい。そうなると是が非でも欲しいのが、シングルスでの3勝だ。イスラエルのシングルスのナンバー1は、98位のドゥディ・セラ。ただし3年前にはトップ30も記録している、経験豊かな実力者だ。錦織にはエースとして、この相手エースを破ることが求められている。

 もちろんそのような状況と責務は、錦織本人も自覚している。「相手はダブルスが強いので、シングルスでセラに勝つかどうかが重要になってくる」。決戦を控え、そう語る錦織は「みんなの力は上がっている。しっかりやれば勝てる」と力強く続けた。

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