【テニス】錦織圭の強さへの渇望。シード選手として「より攻撃的に」 (2ページ目)

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi  photo by Ko Hitoshi

 錦織自身がこう語っていたように、シード選手として、現在の実力が試される試合になった。「強気の気持ちで、リスクも負っていかないといけない」と気を引き締めていた錦織だったが、チリッチ得意のサーブに苦しめられ、特に、バウンドが高くキックするスピン系のセカンドサーブに対して、バックハンドリターンのミスを多く強いられた。錦織が握った9本のブレークポイントの内、ブレークできたのは1回だけで拙攻が目についた。

「大事なポイントで、たとえファーストサーブが入らなくても、セカンドサーブがよかったと思う」(チリッチ)

 12本のサービスエースを打ち込んで試合後にこう語ったチリッチとは対照的に、錦織はダブルフォールトがらみのブレークを許して、サーブで精彩を欠いた。

「サーブが良くなかったですね。リターンではもっとコートの中に入って打つべきでした」(錦織)

 自分より上位のチリッチに、3時間33分におよぶ4セットで敗れたのだから、錦織は決して下を向くべきではない。だが、今後も繰り返される強敵との対戦に勝っていかなくては、トップ10入りは見えてこないし、ましてやグランドスラムでの優勝を実現することはできない。

「パワープレイヤーというか、サーブがいい相手になかなか勝てていない。こういう相手(チリッチ)としっかり戦って、勝たないとグランドスラムの上位にはいけない。今日は相手がよかったけど、次は勝ちたい」

 今シーズンの錦織は、全豪やロンドン五輪でのベスト8が光るが、まだツアーでベスト4以上に進んでいない。安定した成績を残しているが、飛び抜けた結果がなく、そろそろツアー2勝目が欲しいところだ。

 最近は、ミスが少なく堅実な強さを持つ錦織だが、さらなる輝きを求めるために、ツアープレイヤーとしての体ができあがりつつある今、本来持つ創造性に富んだ攻撃テニスにもっと磨きをかけるべきだろう。

「ストロークは安定しているので、大胆さというか、バックのストレートだったり、フォアをもっと使ったり、攻撃性が加わればいい」

 目下、トップ20をキープすることと、ツアー大会での優勝を目標にしている錦織。「今シーズン残り少ないけど、上を目指して頑張ります」と、すでに次の戦いへ目が向けられている。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る