【テニス】クルム伊達が語った現役への思い。
「自分への期待が大きくなってくる」

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • photo by Ko Hitoshi

ウインブルドンでは1回戦敗退も、今年残りのシーズンへの前向きな姿勢を見せたクルム伊達ウインブルドンでは1回戦敗退も、今年残りのシーズンへの前向きな姿勢を見せたクルム伊達 クルム伊達公子は、現役再チャレンジをしてから、4度目のウインブルドンを迎えたが、1回戦でカタリナ・ボンダレンコに、7-5、3-6、3-6で敗れた。

 春のクレーシーズンで、左足太もも内てん筋に不安を抱えていたクルム伊達は、ローランギャロス(全仏)1回戦で、さらに左ふくらはぎを痛めた。その後も、ロンドンオリンピック出場への最後の望みをかけて、続けてツアー下部のノッティンガム大会でプレイしたため悪化し、ウインブルドンの前哨戦2大会を欠場したのだった。

 ウインブルドン入りをしてから練習はしていたものの、実は、試合直前に大会ドクターからは、プレイをしない方がいいと診断されていた。幅2㎜、長さ2.7㎝の筋断裂があり、血だまりもあった。

 だが、クルム伊達は、炎症止めを飲んでコートに立った。リスクを冒してでもプレイしたのは、テニスの聖地と言われるウインブルドンだったからだ。試合後のクルム伊達が現在の思いを語ってくれた。

――1年前、2回戦でウインブルドン5回優勝のヴィーナス・ウイリアムスをあと一歩まで追いつめました。その経験もあって、今年もウインブルドンでいいプレイをしたいという思いは強かったでしょうか。
「ヴィーナス戦によって、あらためて芝(のコート)での自分のテニスが、今の時代でも、他のサーフェスより有効だということが感じられただけに、今年も楽しみにしていました。クレーシーズンの後、前哨戦も戦えず、ウインブルドンがぶっつけ本番になって、万全でなかったのは、すごく残念でした」

――もし、昨年のセンターコートで、ヴィーナスに勝っていたら、もうやり切ったという思いで、引退していた可能性はなかったですか?
「それはないかな~。満足することはなかったと思いますよ。人間の欲は、限りがないので(笑)」

――ケガで万全ではなかったウインブルドンでしたが、昨年末WTAランキングが144位まで落ちながらも、再浮上してウインブルドンに戻って来ることができました。
「常にふたつの考えは持っています。41歳で、144位から81位まで戻って、再びグランドスラムで戦える位置にいるということは、当然すごいことです。上を見れば、きりがないですけど、実力者でも、勝てなくてランキングを落とす選手がたくさんいる中でキープできていることは、なかなか普通にできることではない。冷静に考えれば、大きなケガがないことは奇跡ですね。
 その思いの反面、これだけ(厳しい勝負の中で)もまれていると、若い選手と同じように勝ちたいという思いが出てくるし、できるんじゃないかという自分に対する期待も当然大きくなってくる。この両方の面を感じながらやっています」

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