【テニス】ロンドンへのラストスパート。クルム伊達がハードスケジュールの連戦を開始 (2ページ目)

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • photo by Ko Hitoshi

 元来、負けず嫌いのクルム伊達だが、オリンピックへのチャレンジは、周囲の期待をよそにいたって冷静だ。

「オリンピックは、本当にイメージがわいてなかったというか、まだわいていない気もするんです(笑)。みんなから言われて、だんだん意識せざるを得なくなったというか(笑)。オリンピックのカットオフは、グランドスラムより全然タフですが、このことと、(より上を目指すチャレンジをしている)自分自身の目標という意味でも悪いことではない。ふたつの意味から、オリンピックが、目指すべき大きなターゲットになりかけているかな」

 また、ロンドン五輪のテニス競技は、ウインブルドンで行なわれるが、そのセンターコートでプレイした経験を持つクルム伊達は、やはり"テニスの聖地"の魅力に引きつけられるという。

「ウインブルドンは、私にとって、目指すに値する素晴らしい場所です。(ウインブルドンでの開催は)歴史的なことですし、最初で最後でしょう。それに、4年後や8年後のオリンピックで、私がプレイできる可能性は100%以上ない、無理な話。4年後に目指すよりも高い可能性があるのならば、目指してみてもいいのかな、と、ここ最近になってジワジワと思えるようになった」

 1988年のソウル五輪からテニスが正式競技に復帰して以来、日本女子選手は誰かが必ず出場している。だが、現時点では誰もランキングで出場圏内におらず、出場が途絶える危機に瀕している。

 クルム伊達は、岐阜での大会優勝後に、羽田空港からの深夜便でフランスへ向かい、ITF2大会、WTA1大会、そしてローランギャロスに臨む。彼女が苦手とするレッドクレーの大会が続くため、ポイント獲得は容易ではないが、ロンドン五輪出場に向けてのラストスパートとなる。

「岐阜で優勝して70ポイント獲得できたのは、もちろんいいスタートになりましたけど、赤土は、私の思いだけではどうにもならないかな。計画どおりにいくかどうか、なかなか厳しいですね。やれるだけのことをやるだけです」

 たとえ困難な状況に直面しても、これまでクルム伊達は、有限実行で多くの目標を達成してきた。また、過去に、95年ローランギャロスでのベスト4の時のように、自分にあまり期待していない時に、好結果が転がり込んでくることもあった。

 だからこそ、クルム伊達がまたひとつ奇跡を起こし、ロンドン五輪に出場してくれることを期待してしまうのであり、それはおそらく私だけではないはずだ。

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