【テニス】クルム伊達が次世代に託す思い。「強い日本に戻ってほしい」 (2ページ目)

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • photo by Ko Hitoshi

「ワールドグループへの道のりは本当に長かった。それだけ長かったからこそ、喜びも大きい。あゆみちゃんも役割を果たす力をしっかりつけてきて、頼もしいナンバーワンだと思う。(村上武資)監督の思いにみんながついていって、最高の形でワールドグループに戻れたと思う」

 今回対戦したベルギー代表は主力の3人が不在で、10代の若い選手ばかり。クルム伊達は、19歳のタマリン・ヘンドラーに力の差を見せつけて、6-1、6-4で勝利し、日本のグループ昇格に貢献した。

「フェドカップでは、普段のツアーとは違うプレッシャーがある中で、結果を出していかないといけない。それを若い選手が経験できたのは大きな意味があるんじゃないかと思います」

 昇格の喜びだけでなく、クルム伊達の言葉の端々には、若い世代に今後の日本女子テニスを託したいという願いが込められている。

「フェドカップで伊達さん達の大事な場面での戦いを見て、私もしっかり役割を果たせる選手になりたいと思った。自分がいい形で終われていないのは悔しいですし、早く私達の世代が強くなって、日本を引っ張っていくぐらいの気持ちでないとダメだと思う」

 そう話す奈良くるみは、今回のシングルスで敗れており、クルム伊達のプレイを見て、さらに実力をつけなければならないことを痛感したという。そんな日本代表の最年少である20歳の奈良だけでなく、会場に応援に来ていたジュニアの選手達にとって、日本代表として戦い、勝利するクルム伊達の姿は、最高のお手本になっているはずだ。

「本当の意味で"強い日本女子テニス界"に戻ってほしい。若手がもっと育って、(日本代表に)新しいメンバーが加わることも必要ですが、それを見守りつつ......」

 クルム伊達は、2013年、世界8強の仲間入りをする日本代表メンバーの中にいるのだろうか。"見守る"という微妙な表現をしたあと、彼女は笑顔で言葉を続けた。

「来年のことになると、いつものことですが、わかりません(笑)」

 クルム伊達が、来年日本代表でプレイをするのか、また、いつまで現役でいるのかはわからない。正直なところ、今の時点では彼女自身にもわからないのだろう。

 再チャレンジ5年目のクルム伊達が、若手と一緒につかみとったワールドグループ昇格は、彼女の再チャレンジにおいて、またひとつ大きな到達点となった。そして、その昇格には、日本女子の若手がさらに飛躍してほしいという、未来への願いが込められている。

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