【テニス】「いい形になっている」。錦織圭がレベルアップさせた世界で戦うための武器 (2ページ目)

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • photo by Ko Hitoshi

 そして4回戦、ATPランキング2位で第2シードのラファエル・ナダルとの対戦となった。これまでの通算対戦成績は0勝3敗。昨年のマイアミでも対戦しており、このときは4-6、4-6で敗れている。

「ナダルだったら、プレッシャーを気にせず、思い切りできると思うので、作戦を考えてやりたい」

 こう語った錦織は、試合前日にランキング4位のアンディ・マリーと練習をして、ナダル対策を伝授してもらっていた。

 ダンテコーチによると、
「まずコートの中央付近に深いボールを打ち、ラファ(ナダルの愛称)にアングル(鋭角にクロスへ打つボール)を使わせないこと。ハードコートでは彼のフォアサイドにアグレッシブに打っていけば、差し込まれてラケットフレームに当たるミスショットになることもある。また、サーブも大事で、ラファにフォアのスライスリターンを少しでも多く打たせること。そして、彼が得意なラリーを避け、甘いボールを見逃さずに攻撃して、状況によっては早めにネットに出て勝負することも大切です」

 そのナダル戦、錦織はナダルのフォアサイドへ積極的にボールを打ち込み、マリーから授かった作戦を果敢に遂行したが、完全には崩し切れない。ナダルのフォアは、誰もが認める世界トップレベルで、攻めが少しでも甘くなれば、たちまち反撃をされてしまう。

「チャンスボールは、(ナダルの)フォアに打とうと思っていました。(ナダルは)フォアの方がいいですけど、ディフェンス力は、バックの方があると思う。でも、どっちに打っても、しっかり返してきた」

 結果は4-6、4-6。ナダルへの挑戦は今回も跳ね返された。しかし、ナダルが勝利を手にするのに、2時間10分を要したことは、錦織の成長の証として捉えるべきだろう。

「圭は、前に出るプレイもできて、打つ直前に方向を変えることもできる。つまり、最も難しいことをやってのける。いいプレイを続けていければ、圭がトップ10になるチャンスはあるよ」

 ただ、レベルアップしているのは錦織だけでなく、ナダルもしかり。ワールドツアーで生き残って活躍する選手は誰もが毎年向上している。

 ナダルは数年前から、錦織のポテンシャルの高さを認めているが、錦織のほうは、16位までランキングが上がった今でも、ナダルから勝利する自分をまだイメージできないという。

「勝つのは難しいと思いますね。自分のボールが全部入って、1セットを取ったとしても、2セット目を取るのは大変だと思う。自分が常にいいプレイをしていないと、チャンスはない」

 それでも、ボッティーニコーチは上を見続けている。

「圭は、今がベストではありません。いくつもの壁を乗り越え、向上する余地があり、まだ若い。彼の技術も、コンディションもまだまだ向上していきますよ。(今シーズンは)グランドスラムでもう1回ベスト8、またはそれ以上を目指せると思っています」

 大舞台で強敵と戦い、日々成長を遂げていく錦織。日本男子でまだ誰も到達したことのない世界のトップの座を目指す挑戦は続く。

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