【テニス】錦織圭をベスト8に導いた3つのカギ (4ページ目)

  • 内田 暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

『心・技・体』。以前から取り組み築いたそれぞれのピースが、このタイミングでカチリとはまる。そうして完成した『錦織圭のテニス』という極上のアートが、勝利の瞬間、全豪のコートに色鮮やかに描き出されていた。

「初の四大大会ベスト8をどう思うか?」「80年前に全豪でベスト8に入った日本人の名を知っているか?」

 試合後、色めき立つ国内外のメディアと対象的に、落ち着き払った22歳の若者の表情が印象的だった。「頭を切り替え、次の試合に集中したい」。そう錦織が目を向ける次の相手は、世界4位のアンディ・マリー(イギリス)。攻守の切り替えや緩急をつけた組み立てがうまく、錦織が「目指している」と言う選手である。

 そのマリーに錦織は、昨年10月に対戦し、3-6、0-6で敗れている。錦織は「あの試合では粉砕された」と苦笑いするが、対するマリーが錦織に向ける視線は険しい。

「ケイとは何度か練習しているが、彼はすごく良い選手。動きが良く、相手の裏をかくのもうまい。コートの後方からでもラリーを支配でき、どこからでもウィナーを奪える。それに彼のことは、ジムでも良く見る。筋力もついてきているようだ」。マリーは錦織を、そう高く評した。

 このマリーを含むランキング上位4選手は、『ビッグ4』として他のトップ選手たちと別格の扱いを受ける存在だ。世界最高峰の舞台で、自らが手本とする選手に立ち向かう錦織圭。きっとそこでは、彼が目指す「もっと上」への扉を開く、新たなカギが見つかるはずだ。

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