【テニス】初のシードで挑む錦織圭の全豪。「理想のテニスができている」

  • 内田 暁●文・撮影 text & photo by Uchida Akatsuki

前哨戦のロディック戦で完勝し、手ごたえを掴んだと語る錦織圭前哨戦のロディック戦で完勝し、手ごたえを掴んだと語る錦織圭「あまり自分にとって有利だとは思っていないです。シードのついていない選手にも、強い選手はゴロゴロいますから」

 日本人男子選手として、初めてグランドスラム大会のシード選手となった錦織圭。だが彼は、その事実に浮かれても、自分の立ち位置を過大評価もしていない。前述した本人のコメント、そして引き締まった表情に、その胸中がにじみ出ていた。

 グランドスラムのシードとは、全128名の出場選手中、上位32人のみに与えられる特権だ。シード選手は、トーナメントドローの異なる山に振り分けられるため、3回戦まで直接対決がない。つまり錦織は、1月16日から開幕する今年最初のグランドスラム『全豪オープン』において、初戦と2回戦は、自分より下位の選手と対戦することが約束されている。現に12日に行なわれたドロー抽選の結果、初戦の相手は、ランキング107位のステファン・ロベール(フランス)と決定した。
 
 かつて世界のトップ選手として活躍し、2009年に現役を退いた杉山愛は、このシードの恩恵を誰よりも良く知るひとりだ。「シードがつくことでグランドスラムへの入り方や、年間スケジュールの組み方がグッと楽になる」とは、杉山や彼女のコーチがよく口にしていた言葉である。初戦から上位選手と当たらないことは心理面でも優位に働き、また、現実的に上位進出の確率も高くなるからだ。

 だが、初めてシード選手となった錦織に、現在の地位を優位と捉(とら)えるほどの余裕や、『慣れ』はないようだ。昨年10月から11月にかけてトップ選手を次々に撃破し、一挙に24位(現在は26位)まで駆け上がったその成長速度は、本人の認識や自覚すら置き去りにしているのかもしれない。「いつもに比べて、あまり話さない。雰囲気がピリピリしているようだ」と父親の清志さんも、普段とは異なる息子の様子を感じ取っていた。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る