ラグビー日本代表の稲垣啓太「気分的には最悪です」。フランス戦で完敗もスクラムはレベルアップしていた (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

稲垣「スクラムの理解度、遂行力が上がった」

 スクラムに関していえば、フランスとの縁は深い。日本代表の躍進はスクラムの進化とともにある。南アフリカを倒した2015年W杯では、「スクラムはラグビーの心臓」とこだわるフランス人のマルク・ダルマゾコーチの指導によるスクラムづくりが奏功した。その後、フランスでスクラムを学んだ長谷川慎コーチの緻密なコーチングでさらにパワーアップしてきた。

 前回対戦の2017年のフランス代表戦の引き分け(23-23)も、2019年W杯のベスト8入りも、スクラムの成長があればこそだった。"慎さんのスクラム"とは、簡単に言えば、魂が細部に宿るスクラム。きめ細かいのだ。

 2019年W杯から成長している部分を問えば、理論家の稲垣は「全部が成長していると思う」と胸を張った。稲垣は、2015年W杯、17年のフランス戦、19年のW杯にも出場している。

「基本的には、やろうとしていることは変わってないんですよ。さらに何が成長したかと言うと、一人ひとりの役割が明確になったんです。新しく入ってきたフロントローも、(慎さんの)理論を徹底的に頭に詰められたからこそ、フランスからペナルティーをとることができた。つまり、スクラムの理解度、遂行力という点で、レベルが上がっていると思います」

チームの連携、プレーの精度が課題

 もちろん、ラグビーはスクラムだけではない。新しく指導陣に加わった元ニュージーランドHCのジョン・ミッチェルアシスタントコーチの徹底指導で、ディフェンス力は高まっている。コネクションしながら前にしっかり出てのダブルタックル、ふたりでのジャッカル(相手ボールの奪取)など。

 ただ、この日は、疲れが見えてきた後半、タックルのコネクション、精度がガタっと落ちた。前半88%(相手91%)あったタックル成功率が後半はその半分程に落ちた。試合全体のそれは65%(相手79%)だった。ペナルティーは前半が4つ(相手8)、後半は6つ(相手6)と増えた。細かいミスも続発した。世界ランキング2位の「ティアワン」(世界の強豪グループ)相手に自らミスを犯していたら勝てるわけがない。

 猛暑についていえば、この試合、10分ごとの「ウォーターブレイク」が実施された。給水タイムである。これは日本にとってはどうだったのか。稲垣は正直だった。

「ゲームのスピードが1回、1回、切られるのは......。止めたくなかった。テンポがずれるというか。でも、安全対策のひとつなので」

 準備において、日本代表の暑さ対策は万全だった。坂手主将も冗談口調で言った。

「もうちょっと暑かったらよかったかな。来週(の試合では)、もっと暑かったらいいのに」

 フランスとのテストマッチ第2戦のことを聞かれれば、稲垣は言葉に力をこめた。修正点は明確。

「コミュニケーションミスと細かいミス、反則をいかに減らすか、そこだけです」

 そういえば、2013年6月、同じような高温多湿な気候のなか、来日したウェールズ代表から勝利したのはテストマッチ第2戦だった。

 日本代表は7月9日、国立競技場で、フランス代表と第2戦を行なう。安定したスクラムを維持し、チームとしての連携、プレーの精度を高められれば......。歴史的な初勝利、そう、リベンジとなるのだが。     

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