ラグビー日本代表の稲垣啓太「気分的には最悪です」。フランス戦で完敗もスクラムはレベルアップしていた (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

惚れ惚れする結束したスクラム

 ジョセフHCが、来年のラグビーワールドカップ(W杯)に向けてのスタートと位置づけるテストマッチシリーズである。テーマは"現在地"の確認だった。

 セットピース、とくにスクラムのそれを見る上でフランスは絶好の相手だった。スクラムは全部で10本(マイボール4、敵ボール6)組まれた。スクラムの度、2万4570人の観客で埋まったスタンドから手拍子が沸き起こった。

 日本もフランスも、試験的ルールの「ブレーキフット」の反則を1本ずつとられた。これは、両チームのHO(フッカー)はスクラムを組む際、バインド時に片方の足を前に出して、自分たちのFWのウエイトを支えるようコントロールしないといけないのだが、その片足を前に出さずに安定が失われると反則となるもの。レフェリーの判断は難儀だろう。

 HOの坂手淳史主将は、「ブレーキフットは1本とられたけど、すぐに修正できた」と言い、満足顔で続けた。

「スクラムはいい形で組めていたと思います。相手はバインドのところでプレッシャーをかけてくるスクラムだったけど、うまくコミュニケーションをとってバック5(LO<ロック>とFL、ナンバー8)の重しを相手に伝えることができたのかなと思います」

 言葉どおり、スクラムは安定していた。象徴は、フロントローのメンバーが3人とも替わったあとの、ノーサイド寸前の一連のスクラムだった。敵陣ゴール前、FW8人が固まってガチッと組み込み、フランスからコラプシング(故意に崩す行為)の反則をもぎ取った。再度、スクラムを選択。そのスクラムも重圧をかけ、展開から意地のトライを奪った。惚れ惚れするほどの結束したスクラム、次週につながるトライだった。

 試合後、記者と交わるミックスゾーン。稲垣は白いマスク下の顔を少し緩めて言った。

「僕たちがやろうとしたスクラムは組めた。後半、メンバーが替わっても、相手にプレッシャーをかけてペナルティーをとることができた。スクラムに関しては、全員がレベルアップを確認できたんじゃないですか」

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