127キロの怪物タタフ、メガトン級の突進力で日本代表昇格をもぎ取る。パワーの源は「ギフトです」

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

日本代表の「1軍」に昇格したテビタ・タタフ日本代表の「1軍」に昇格したテビタ・タタフ ラグビー日本代表がFW戦でウルグアイ代表を圧倒した。とくに目立ったのが、ナンバー8のテビタ・タタフだった。巨体を生かしたメガトン級の突進力で猛烈アピール、主力組で編成される日本代表"1軍"への昇格をもぎ取った。

 6月18日の東京・秩父宮ラグビー場。観客が1万4448人。タタフがボールを持つ度、赤白の日本代表のレプリカジャージで埋まったスタンドがどっと沸いた。猪突猛進。驚異的なパワーで、見る者をワクワクさせてくれるのだ。

 試合は、世界ランキング10位の日本代表が、同19位のウルグアイに34―15で順当勝ちした。日本代表予備軍にあたるNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)のチームによる前週の試合に続き、タタフはこのテストマッチ(国別代表戦)でも、80分間フル出場した。安堵と疲労からだろう、試合が終わると、26歳は緑の芝生にしゃがみこんだ。

 「グリット(GRIT=やり抜く力)」、これがNDSのチームスローガンだった。試合後のオンラインによる記者会見。力を出しきりましたか、と質問すれば、タタフは「はい」と少し笑って、言葉に充実感を漂わせた。

「80分間、自分の得意なプレーを出しきれたかなと思います」

 もっとボールがほしかったですか、と聞けば、タタフは漏らした。

「そうですね」

 圧巻だったのが、前半終了間際の迫力のトライだった。敵陣22メートルライン付近。右のショートラインアウトから展開されたボールをもらうと、水色ジャージの相手選手2、3人を巧みなボディーコントロールで振りきって、ポスト下に飛び込んだ。ゴールも決まって前半を15―3とし、勝負の流れをつかんだ。

パワフルさの源は「ギフト」

 そのトライのシーンを聞けば、小声でこう、振り返った。

「あれは、チームのサインプレーでした。相手のバックスに当たりにいこうという目的で......。それで、トライになりました」

 試合結果の公式記録では、「身長183センチ、体重124キロ」となっている。今何キロですか? と聞けば、苦笑いを浮かべた。

「ひゃく・にじゅう・なな」

 エッ。127キロですか、と聞き返すと、「はい」と笑顔を作るだけだった。太りやすい体質で、一度、体重が落ちて、また増えたという。

 そういえば、このパワフルさの源は何なのだろう。ストレートに聞けば、タタフは少し考え、こう言ったことがある。

「ギフトです」

 すなわち、天賦の才能ということだろう。生来の優れた運動能力、体幹の強さ、柔らかい筋力。加えて、食事、睡眠、トレーニングか。所属する東京サントリーサンゴリアス(東京SG)のHPによると、特技として「いつでも、何時間でも寝れる」とある。「自分の性格:シャイ」「苦手なこと:人混み」にはつい笑いたくなる。

 トンガ出身。「6歳の時、家族がもっといい生活ができるように」ラグビーを始めた。足が速く、一時は陸上もやった。中学3年で来日し、目黒学院高で鍛えられた。東海大に進学。高校日本代表、U20(20歳以下)日本代表、ジュニア・ジャパンと順調に成長し、大学時代の2016年に日本代表に選ばれた。が、2019年ラグビーワールドカップ(W杯)には出場できなかった。

 その後、日本代表に復帰し、昨年の欧州遠征では活躍、この試合で代表10キャップとなった。殊の外、家族思いで知られる。両親を助けるためにラグビーに励む。この日の試合、左手首の白いテーピングテープには、黒マジックで「MOM・DAD」と書いていた。かあちゃん、とうちゃん──。

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