「ちょっと飛びぬけている」。ほほえみの貴公子・マッケンジーが東京SGを決勝へ導く (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by 齋藤龍太郎

 同じくミックスゾーン。マッケンジーのことを聞けば、SH(スクラムハーフ)流大は、「ワークレート(運動量)と嗅覚はちょっと飛びぬけている」と評し、こう続けた。

「ボールを触る回数は多いし、さっきアッチにいたのに次にはコッチと左のアタックに参加してくる。その辺はやっぱりオールブラックスの選手だなと思います。シーズンの最初は、みんな反応できず連係できていないことが多かったですけど、今日はほんと、よかったと思います。気合が入っていた」

 マッケンジーから学んだことは?

「たくさんありますけど、一番はラグビーを楽しむことですかね」

 途中から入ったSH齋藤直人はこうだ。

「一緒にやっていてすごく感じるのは、ヒラメキを大事にしているということ。チームの枠(約束事)のなかでもヒラメキを大事にしている。スペースがあれば走るし、ああいうサイズでボールをラックするのはすごく刺激的です」

 ただよく見れば、マッケンジーは小柄なからだで工夫している。フィジカルコンタクトを極力避け、ハイボールキャッチひとつとっても、正面からいかず、ちょっとからだをずらしてボールを捕ったりしている。自身のスキルにこだわりがあるのだろう。その存在が他の選手の成長も促している。

 昨季はボーデン・バレット、そして今季はマッケンジーと、オールブラックスの世界的スターがチームを引っ張る。とくにマッケンジーはフレンドリー。齋藤によると、毎朝、必ず自分から全員にあいさつするそうだ。選手はもちろん、裏方のスタッフにも。

 チームのHPをのぞけば、<好きなこと「寿司とゴルフ」>と記されている。チームメイトとゴルフに行き、グラウンド外でのコミュニケーションを深めている。これって、信頼関係構築には大事なことだ。

 その結果。リーグワンのリーグ戦の初代得点王(191点)に輝いた。この日も、ゴールキックこそ不安定だったが、攻守に存分に働き、「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」に選ばれた。

 ところで、マッケンジーはゴールキックを蹴る前、なぜ微笑むのか? チームスタッフによれば、自分をリラックスさせるルーティンワークのひとつだった。かつて、スポーツ心理学者のアドバイスを受け、始めたという。

 最後に再び、マッケンジー。

 決勝戦の抱負を聞けば、こう言った。

「楽しんでラグビーをしたい。優勝したい。ファンのみなさんには感謝している。来週も応援してほしい」

 果たして、マッケンジーは初代リーグワン王者に就いて、再び笑うことができるだろうか。

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