「ちょっと飛びぬけている」。ほほえみの貴公子・マッケンジーが東京SGを決勝へ導く

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by 齋藤龍太郎

リーグ戦の初代得点王にも輝いたダミアン・マッケンジー(東京サンゴリアス)リーグ戦の初代得点王にも輝いたダミアン・マッケンジー(東京サンゴリアス)  "ほほえみの貴公子"ことダミアン・マッケンジーに満面の笑みがこぼれる。ラグビーリーグワンの準決勝で、東京サンゴリアス(東京SG=旧サントリー)が、ブレイブルーパス東京(BL東京=旧東芝)に30-24で快勝。チームを決勝に導いた27歳のFB(フルバック)は、さざ波のごとき観客の拍手を受け、こう言った。

「非常に厳しい展開になったけど、チームとしていいパフォーマンスができた。たくさんのファンの前で一生懸命、ハードワークができ、とても満足している。アリガトゴザイマス」

 21日。曇天。強風下の花園ラグビー場である。ニュージーランド代表「オールブラックス」で40キャップ(国代表数)はダテではない。マッケンジーの存在は圧倒的だった。切れ味鋭いステップとスピード豊かなランだけでなく、キックチェイスやタックル、コンタクトエリアでも、177センチ、78キロのからだを張った。泥臭いまでの献身的なプレーで。

 記者と交わるミックスゾーンで、白いマスク姿のマッケンジーはこう、続けた。右腕と左ひざにはアイシング用の氷入りのビニール袋。額には小さな打撲の赤いアザも。

「リードされている状態からよく挽回できた。前半、すばらしいトライで追いついて折り返せたのは、大きかった。(BL東京に)前回負けていたので、リベンジできてほんとよかった」

 ノーサイド直後の笑顔のことを聞けば、マッケンジーは感慨深そうに言った。

「ファンの拍手を聞いて、すごく感情的になった。ハッピーだった」

 マッケンジーの運動量たるや。グラウンドの右にいたかと思えば瞬時に左にも動き、BL東京のディフェンスを切り裂いた。前半終了のホーンが鳴ったあとだった。ラストプレーとなるラインアウト。東京SGはモールを押し込み、右ラインに展開。CTB(センター)サム・ケレビがタックルを受けてボールを浮かす。これを逆サイドの右側から走り込んできたマッケンジーが捕って、ボールを左手で抱えて鋭いステップで1人、2人とタックルをかわした。右から左へ。

 相手ディフェンスが崩れた。最後は左隅で待っていたPR(プロップ)石原慎太郎が左隅にトライした。その後の難しい位置からのゴールキックも、マッケンジーが蹴り込んだ。いつものごとく、蹴る前に表情をふっと緩ませて。17―17とした。

 確かに東京SGの勝因はFW(フォワード)の頑張りだった。だが、自慢の「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」を勢いづけたのは、やはり王国のスターだった。負けじ魂の塊がチームにリズムをつくった。

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