横浜キヤノンイーグルス・沢木敬介監督が目指す攻撃的ラグビー。「チームのスタイルをファンが支持してくれることでチームはできていく」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by スポニチ/アフロ

【体力テストで選手の性格も把握】

 沢木監督のシンプルな思考は、選手を理解し、把握するための方法論にも及ぶ。最初に選手に課したのは、簡単な体力テストだった。

「一番最初の練習の前に、選手全員に『これをやります』と体力テストのターゲット(目標値)を送っておいたんです。いい準備をしてくる選手はターゲットをきってくるし、何も考えないで練習にくる選手はタイムがきれないんですよ。そこで見たかったのは、ひとつの練習として手を抜かず、真剣に臨んでくる選手が何人ぐらいいるのか。また、強いチームを倒すためには、フィジカルが必要なので、実際に体力的にタフな選手がどのくらいいるのか、ということです」

 選手を見極めると、次はキャプテンを選び、スタンドオフの田村優を指名した。

「キャプテンに必要なのは、まずパフォーマンスです。プレーでチームを引っ張るのがリーダーですから試合に出て、チームを牽引し、勢いを与えられる存在でないといけない。田村は、あまり感情を出さないですけど、そういう選手です」

 日本代表のスタンドオフでもあり、プレー面でも精神的支柱としてもチームの軸になれる存在だ。ちなみに田村は、今シーズンもキャプテンになっている。

【目指すラグビーとは?】


 
 チームは、昨年の夏頃から始動し、夏合宿などを経て、チーム作りを進めてきた。沢木監督はキヤノンのスタイルとして、スピード感を活かした攻撃的なラグビーを標榜している。

「ボールが動かない守備ばっかりのラグビーを見ていても面白くないと思うんです。チームのスタイルをファンが支持してくれることでチームはできていくと思うんですよ。ではどういうラグビーが支持されるのかというと攻撃的なラグビーだと思うんです。ボールを動かしながら前進することをベースにしたラグビーをやっていきたいですね」

 昨年は、コロナの影響で試合数はリーグ戦わずか6試合、プレーオフ2試合で終わった。そのなかで目指すスタイルは、完成の域には届かなかった。

「1年で、劇的な変化を求めるのは難しい。これまでの習慣ややり方を変えるには実戦と時間が必要です。ただ、手応えも感じています。自分たちのスタイルをやりきろうという思いが芽生えてきました。それを維持させるためには選手にちょっとした成功が必要になります。それが昨年、ひとつ勝っていくごとに確かなものになっていった感じがあります」

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