帝京大の岩出監督が「納得していたわけではない」苦しみの3年間。「今季はかなりタフにやった」チームがV10を達成

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

「紅き旋風」が復活の狼煙を上げた----。

 2017年度までラグビー大学選手権V9の金字塔を成し遂げた帝京大が難敵・慶應義塾大を64−14で下し、関東大学対抗戦で開幕から7戦全勝を達成。3年ぶり10度目の優勝を飾った。

 前半から伝統的に守備に定評のある慶應大に対し、帝京大はSO(スタンドオフ)高本幹也(3年)を中心にフォワード、バックス一体となってボールを広く展開。自慢の攻撃力で前半3トライ、後半6トライの計9トライを重ねた。一方、守っても後半は相手を零封し、今季の調子のよさを証明して見せた。

10度目の優勝を記念して両手を広げる帝京大の選手たち10度目の優勝を記念して両手を広げる帝京大の選手たちこの記事に関連する写真を見る この試合はケガでグラウンドに立てなかった主将のPR(プロップ)細木康太郎(4年)が、3年ぶりの喜びを語った。

「(対抗戦で)全勝で優勝したことは、いいモチベーションになる。この経験や僕たちのマインド、考え方が大学選手権優勝につながっていったらいい」

 帝京大は過去3年間、苦しい時間を過ごしていた。

 2018年度は対抗戦1位で通過したものの、大学選手権では準決勝で天理大に敗れた。翌2019年度は対抗戦3位で大学選手権は初戦(3回戦)で流通経済大に、昨年度は対抗戦4位に沈んで大学選手権・準決勝で早稲田大に敗れた。

 細木キャプテンを筆頭に今年の4年生以下は、自身が強い帝京大を見て紅きジャージーに憧れて入学したものの、大学に入ってから1度も大学王者を経験していない選手たちだ。ただ、監督歴25年の岩出雅之監督は特段にV9時代の話をすることなく、「自分たちのチーム、自分たちのプレーで優勝しろ」と選手たちに声をかけていたという。

 そんな環境のなか、同期の4年生たちに推されて新チームのキャプテンに細木が選ばれた。本人は「想像していなかった」と言う。副キャプテンになったFL(フランカー)上山黎哉とCTB(センター)押川敦治(ともに4年)も候補に挙がったが、「最も勝ちたい気持ちを前面に出している」というのが選ばれた理由だった。

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