早大は1年生コンビの活躍などで慶大に辛勝。亡き大先輩に捧げる勝利も「対応力」に課題 (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by 齋藤龍太郎

 試合の入りはよかった。早大の速攻展開がさえた。FW(フォワード)も、BK(バックス)も、慶大自慢のタックルをはずし、よく前に出た。ボールをはやく大きく動かした。今季2度目の先発のSO(スタンドオフ)伊藤大祐が積極的に仕掛けていく。スペースがあれば自ら突破し、なければ、効果的なキック、鋭いパスでラインを押し上げた。

 CTB(センター)長田智希主将も鋭利なランで縦に突く。試合後、長田は「いいアタックができたと思います」と言葉に充実感を漂わせた。

「帝京大戦では自分たちの強みがなかなか出せなかった。でも、今日は、アングルチェンジを含め、慶応大学のディフェンスの圧力に対して、切りにいくプレーができました。そこには自信があります」

 加えて、収穫を挙げれば、1年生コンビのNO.8(ナンバー8)佐藤健次、SH(スクラムハーフ)宮尾昌典の成長だろう。とくに佐藤。177センチ、98キロながら、ボディコントロールがよく、相手のタックルの芯をはずしながら、再三、突破した。前半6分。ラックの右で、SH宮尾からパスをもらうと、からだを反転させながら左中間に飛び込んだ。

 試合後の記者会見。プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた佐藤は白いマスク下の顔を緩めながら、こう声を弾ませた。

「早慶戦という舞台で、きのうから自分も緊張していて......。でも、自分のなかで、"強く、賢く"というのを個人テーマにおいていました。(最初のトライは)練習どおり、いいコースに走り込むことができました」

 18歳は、神奈川・桐蔭学園3年では主将を務め、2年連続高校日本一に貢献した。好きな言葉が「自信は努力から」。将来は「日本代表のフッカー」と目標設定は明確で、高校時代からノートに練習や試合の収穫、課題点を記してきた。

「春に比べると顔がすっきりしたが」とベテラン記者から聞かれると、照れながら説明した。

「自分の強さに足りないところに気づいて、ウェイトトレーニングだったり、練習後のパワーアップだったりに取り組んできたので少しからだに変化が出たのかなと思います」

 それにしても、である。早大は後半、別チームのようになった。後半開始から、長田主将が「コンディションを考慮して」(大田尾監督)ベンチに下がったことで、ゲーム運びがちぐはぐとなった。加えて、前半の大量リードで出足が鈍ったことも、慶大が戦法を変えてきたこともあろう。学生ラグビーはわからない。防戦一方となり、4トライを奪われた。

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