齋藤直人がサンウルブズで初先発。「うまくいかない」状況で輝きを見せた (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

 だが、まだ大学生。大久保直弥ヘッドコーチは「あのプレッシャーの中でよくやったと思う」とほめた。

「しいて課題をあげれば、コミュニケーションの部分でしょうか。バックスとフォワードの連携のカナメなので。そこの部分はもっと改善できるんじゃないかな。でも、それを差し引いてもね、ほんとすばらしかった」

 チーフスの主将、ニュージーランド代表のSH、ウェバーはこう、齋藤を評した。

「非常に未来が明るい選手だと思います」

 素材は文句なしだ。加えて、努力家。早大ラグビー部HPには「自分のアピールポイント:練習が好き」と書かれている。モットーが『その時、その時、100%を出し切ること、出し切るために準備を怠らないこと』。つまるところ、まっすぐな男なのだ。

 そういえば、ちょうど1年前、齋藤はワールドカップトレーニングスコッドキャンプのメンバーから漏れた時、その練習にひとり、スタンドに見学に来ていた。日本代表になりたい、少しでも上手になりたい、そういった向上心ゆえだろう。

 W杯日本代表メンバーから外れた時、齋藤は「悔しさが込み上げてきました」と漏らしたことがある。本気で昨年のW杯メンバーを狙っていた。そのW杯を観戦し、代表入りへの思いがさらに募った。「次のフランス大会、絶対、出場したい気持ちが強まりました」と口にしたこともある。

 W杯で活躍したSHには、南アフリカの172㎝のファフ・デクラーク、167㎝のハーシェル・ヤンチースら小柄な選手もいた。165㎝の齋藤は「サイズは言い訳にはならない」と言い切るのだった。

 実力とともに、人気も急上昇している。バレンタインデーではチョコレートをいくつ? と聞けば、自分のところに届いたのは「ゼロです」とほおを少し赤らめた。たぶん、大学のラグビー寮にはたくさん、届いているのだろう。「でも、マスクをもらいました」

 齋藤のプレーを見ていると、ワクワクする。卒業後はサントリーへ進む。サンウルブズのモットーのひとつが『真剣』。マインドセットはもちろんだが、日本刀のはがねのごとく、たたけばたたくほど強くなるとの意味も持つ。

 サンウルブズでは今後、ペイジとのポジション争いを展開することになる。齋藤は言葉に力を込めた。

 「アタックのコントロールのところは課題ですけど、ディフェンスとか、フィットネスとかで(チームに)貢献するところでは張り合えるのかな。まずは、姿勢というか、練習態度はマスト。すべて全力でやって。ライバルとして、やっていきたいです」

 新星が高いレベルでもまれ、どう成長していくのか。真剣がどう磨かれるのか。2023年のW杯へ、険しい道はつづくのだった。

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