齋藤直人がサンウルブズで初先発。「うまくいかない」状況で輝きを見せた (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

 大学選手権では主将として早大を優勝に導いたが、大学とSRとのレベルは格段にちがう。ブレイクダウンの強度、コンタクトの強さ、タックル、ディフェンスの激しさ、スピード、パワー、スキル...。「あれだけ、プレッシャーを受けたのは人生で初めて」。それでも、齋藤は得意の機動力を生かし、テンポよくボールをさばいた。懸命に。

 開始7分。サンウルブズはラインアウトのクリーンキャッチから順目に左、左、左とラックからボールを回し、ワンテンポ遅らせて、右へ。一回、FW(フォワード)を縦に突っ込ませ、ゴールライン寸前のラックからSH齋藤がシャープなパスをSO(スタンドオフ)ガース・エイプリルに投げ、左中間に先制トライした。

 後半には、途中から交代出場の早大の同期、中野将伍のトライも演出した。

「チームがスコアしたことはうれしいです。それも将伍、よかったです」

 ディフェンスでもがんばった。前半の中盤。相手のエース、FB(フルバック)ダミアン・マッケンジーが個人技で大幅ゲインし、フォローしたSHブラッド・ウェバーがゴールラインに迫った時、齋藤は脱兎のごとく戻って、ボールを奪い取った。トライを防いだ。

 この危機管理能力。齋藤は説明した。

「最初は(相手の)右のパスコースを消そうと思って走っていて、サイア(シオサイア・フィフィタ)も(相手の下に)行ってくれたので、うまく右手が絡めました。ああいうところはサンウルブズが大事にしようとしているところなので。止められてよかったです」

 ラスト5分で交代した。齋藤はピッチを出る際、白いマスク姿が目に付くスタンドから温かい拍手を送られた。
 観客は1万8千7百人。齋藤の述懐。

「拍手はうれしかったですけど、ああいう結果でしたし、全然満足したプレーができませんでした。ファンの方への感謝が大きいですが、悔しい気持ちももちろんありました」

 確かに試合全体をみれば、相手にブレイクダウンでボールに絡まれ、球出しのテンポを遅らされることも多々、あった。キックを含め、SH、SOのハーフ団で相手の堅いディフェンスを崩すことはなかなかできなかった。課題は判断のはやさか、コミュニケーション不足か。

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