震災から25年。神戸製鋼が
「1.17」を背負い、大一番を制す

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 第三高炉は2017年に廃炉となったが、神戸製鋼のウェイン・スミス総監督の発案により、チーム全員で見学に訪れた。その時、高炉の煉瓦を持ち帰ったことがきっかけで、練習グラウンドも「第三高炉」と呼ばれるようになったという。そして今シーズン、会社とクラブを結ぶ絆として、その高炉が新たにジャージーに描かれたというわけだ。

 小学校1年生の時に被災した神戸市出身のSH日和佐篤は、試合前にこう語ったという。

「神戸が復興できたのは、今日、試合を見に来てくださっているみなさん、神戸の街の皆さんのおかげです。いいゲームをしよう」

 試合は序盤、サントリーにリードを許す展開となる。しかし、山中が相手キックからカウンターを仕掛けてトライを奪い、前半25分に10-10と同点に追いつく。その後は点の取り合いとなり、神戸製鋼のリードで前半を折り返した。

 ところが25-16で迎えた後半12分、逆転を狙うサントリーの圧力に屈して反則を繰り返し、PR山下裕史がシンビン(10分間の退場)となってしまう。

 25分以上も時間を残す状況のなか、まさかの数的不利――。流れはサントリーに傾くかと思われた。だが、「Feel the Fire」のスローガンを掲げる神戸製鋼の男たちの闘志は、この劣勢でさらに燃え上がった。

 サントリーの攻撃をゴールライン直前でしのぎ切ると、後半18分にはパスミスを拾ったWTBアンダーソン フレイザーが仕掛け、さらにはカーターも相手の隙を見逃さずラインブレイク。そして最後はCTBリチャード・バックマンが中央にトライを決めて、32-16と突き放した。

 その後、サントリーの猛攻を食らうが、劣勢でのトライが大きかった。結果的にこれが決勝点となり、神戸製鋼が逃げ切ってサントリーを35-29で下した。

「(震災が)街にどういう影響を与えたか、だいたいわかっている」

 故郷ニュージーランドのクライストチャーチで地震の被害にあったカーターはこう語る。

「地震の被害から今の綺麗な神戸まで復興するのに、犠牲もハードワークもあったと思います。ラグビーをしているスポーツ選手として、プレーで感謝の気持ちを伝えようとした」

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