福岡堅樹が東京五輪に挑む使命感「ラグビーの火を消してはならない」 (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • ロイター/アフロ●写真 photo by Reuters/AFLO

 福岡は己の人生を真摯に生きる。医者だった祖父、父の影響から、自分も将来、医師になることを目指している。7人制ラグビーの東京オリンピックが終わったら、医学の道に進むつもりだ。年末から、練習の合間を縫って、医学関係の本で勉強もはじめた。

 福岡は笑顔で続ける。

「次の2023年のワールドカップでは、日本代表へのプレッシャーは大きくなると思います。僕は、はたから応援させてもらいます。いち学生として」

 もっとも、現在盛り上がっている日本のラグビー界ゆえ、1月12日に開幕するトップリーグ序盤に出場した後、7人制ラグビーに専念し、東京五輪を目指すつもりだ。チーム事情や、ラグビー協会の思惑もあろうが、そこはラグビー・ファンのことを考えての決断なのだろう。

 問題はプレーヤーとして、15人制から7人制ラグビーにすぐ、移行できるのか。そう聞けば、福岡は「4年前もやったことなので大丈夫です」と笑顔を返した。
 
 オリンピック種目の7人制ラグビーは、フィールドが15人制と同じ広さにも関わらず、プレーする選手は半数以下の7人ずつとなっている。試合時間は原則7分ハーフと短いとはいえ、一人ひとりの肉体的負担、運動量は非常に大きいものとなる。
 
 7人制ラグビーのオモシロさは?と聞けば、福岡は「スピーディーさ」と説明した。
 
「やっぱり、ボールの動くはやさというのは、15人制と比べると大きく上がってくると思います。もちろん、得点が入りやすいですし、密集ができにくい分、オフロードパスも増えたり、ボールがどんどん、どんどん展開されていったり。スピーディーさが15人制とは違った面白さだと思います」

 難しさは? 

「だからこそ、一度、ゲームの流れをつくられてしまうと、取り返すのが難しくなります。時間も(ハーフ)7分しかない。流れをなかなか修正できない難しさがある。最初から、いかに自分たちの流れをつくるかが大事なところでしょう」

 福岡は175cm、83kg。4年前のリオ五輪の際、前年のラグビーW杯から体重が4、5kg落ちたそうだ。今回もそう、なるのだろう。
 
「パワーよりはスピード、何度もトップスピードで走るトレーニングが増えていくので、締まったからだになっていきます」

 モットーが、故スティーブ・ジョブズ氏の『Stay Hungry、Stay Foolish(ハングリーであれ、愚かであれ)』である。何事にも一途な好青年は、中学時代、陸上の記録会で100mを初めて12秒を切ったとき、「風になった気分だった」と教えてくれたことがある。
 
 福岡は当時、陸上の『一瞬の風になれ』という青春小説を読んでいた。それから十数年後、ラグビーW杯では日本の熱風になった。そして、今年の夏、東京五輪で再びスピードスターは熱い「疾風」となる。メダルを目指して。

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